- 南アフリカが世界に誇る2つの豪華列車「ブルートレイン」と「ロボスレイル」。高級ホテルに滞在しながら、南アフリカの各都市やアフリカ諸国を巡る、そんな贅沢な旅を叶えてしまうのが列車の旅の魅力です。
【ブルートレイン】
ブルートレインの歴史は、開拓時代の南アフリカで建設されたアフリカ大陸横断鉄道から始まっています。ケープタウンからカイロまでを走る鉄道という壮大な計画は、残念ながら実現しなかったものの、この線路は19世紀のゴールド・ラッシュ、さらにダイヤモンド・ラッシュで賑わう人々を運ぶユニオン鉄道社によって活用されました。20世紀に入り、富裕層の間で鉄道旅行が人気を博すようになると、南アフリカの海岸線を象徴するロイヤルブルーとクリーム色の豪華列車が誕生。大戦中は運休していましたが、1946年に「ブルートレイン」の名称で復活しました。
【走る超高級ホテルに揺られて】
定期運行ルートは、ケープタウン/プレトリア、ケープタウン/ポートエリザベスの2本となっています。豪華列車の旅は、出発する時点からすでに優雅。チェックインの手続きをする駅のラウンジで、冷たいウエルカムドリンクと小さなおつまみの歓迎を受けると、いよいよ乗車です。客室はすべてスイートで、グースの羽布団、コットン100%のベッドリネン類、大理石の洗面台、景色がよく見える窓辺に設置されたデスクなどが目に入る。ベッドは就寝時まで折りたたんでしまってあります。
【途中下車で観光名所を満喫】
列車の旅では、途中で立ち寄る町での観光も楽しみのひとつ。プレトリア・ルートではキンバリー、ポートエリザベス・ルートではオーツホーンからカンゴ・ケーブへのエクスカーションが用意されています。
キンバリーは、1869年、農家の壁からダイヤモンドが発見されたことで一躍有名になった場所です。一攫千金を夢見る人々が押し寄せ、地面を掘り返してできた巨大な穴は、なんと深さ365メートル、周囲1.5キロメートル。1914年、炭鉱が閉鎖されるまでに掘り出されたダイヤモンドの量は、計1400万カラット以上にのぼりました。今でもダイヤ探しに挑むことができます。
オーツホーンではダチョウ牧場や郷土料理を体験することができますが、最大の見どころはカンゴ・ケーブ。この一帯は、数百年前まで海の底でしたが、地殻変動により隆起して陸地になた場所です。この過程で、海水がゆくりと土の中に染み込み、地下の水晶と石灰岩を削り取ったために出来上がったのが、この不思議な地下世界といわれています。
【ロボスレイル】
ブルートレインと並び、南アフリカが誇る豪華列車として人気なのがロボスレイルです。運行開始は1989年と比較的最近ですが、もともと乗り物好きだった実業家のローハン・ボス氏が、家族旅行のためにとオークションでビンテージ列車を購入したことが、ロボスレイルの始まりでした。その後、老朽化した蒸気機関車や放置されたままの客車などを買い集め、修復し、現在の姿に甦えらせました。
【まるで鉄道のアンティーク見本市】
古い映画のワンシーンを連想させるような蒸気機関車や客車、それに快適なサービスがそろったロボスレイルは、運行開始以来、あっという間に世界随一の豪華列車として知られるようになりました。創業者のローハン・ボス氏は、買い集めた客車に、自分の子供たちの名前を付けて大事にするほどの鉄道好き。古いものでは、1911年建造の車輌もあるといいます。ヨハネスブルグで見つけた1924年建造の食堂車は、ビクトリア朝様式のチーク材の柱を取り出して丁寧に修復され、現在は食堂車No.195「上海」として活躍中です。
さらに、鉄道駅ホテルとして1893年に建設されたビクトリアホテルは改築計画が持ち上がると、中止を訴えてその保存に貢献しました。そんな創業者の心意気が、世界の鉄道ファンを魅了する隠れた秘密なのかもしれません。
【エドワード王朝様式の内装で貴族気分】
往時の貴族の旅行気分が味わえるのも、ロボスレイルの魅力のひとつです。実際に、客車の中には王侯貴族用に作られたものもあり、客室の内装は重厚な雰囲気のエドワード王朝様式。食事の選択肢も豊富に設定されています。さらに。一番広いロイヤルスイートルームは面積16平方メートルと、世界の列車の中でも最大級の広さを誇ります。同スイートは寝室とラウンジ、浴槽、シャワーなどが揃っています。
客室は、その他広さ11平方メートルのデラックススイートと同7平方メートルのプルマンスイートが用意されています。各客室にはダブルベッドまたはツインベッド、物書き用スペース、セーフティボックス、 飲み物が入った小型冷蔵庫、シャワー、ドライヤーなどが用意されています。
ブルートレイン豆知識
- 列車は全長396メートル 計18車両
- 最高時速90キロメートル
- 旅客の収容規模は41室(82人)または37室(74人)の2タイプ
- 車内の室温は20~21度。各客室のエアコンはそれぞれ調整可能。
- 料金はオールインクルーシブ。キャビア、シャンパン、外線電話以外はすべて含まれています。
- 服装はスマートカジュアル。ただし夕食時のみ男性はジャケット、女性はエレガントなものを。
- 車内の電圧は220V
- 会場施設は22人まで対応可能。ラップトップ PC、マルチメディア機器、コピー機、ファクス、プロジェクターなども用意可能です。
ロボスレイルアフリカ満喫コース
ロボスレイルは路線網が充実しているので、どれに乗ろうか迷ってしまうかもしれません。定期運行ルート4コースのうち、最も手軽なのは、ケープタウンからプレトリアまで計48時間の旅です。その他、ビクトリアフォールズまで足を延ばすプレトリア/ビクトリアフォールズ線、途中でサファリが楽しめるケープタウン/ジョージ線、風光明媚なプレトリア/ダーバン線などのコースがあります。
毎年5月と7月には、近隣のアフリカ諸国まで足を延ばすスペシャルプログラムもあります。5月には、プレトリアからカラハリ砂漠を抜けてナミビアまで行く計3400キロメートル、7日間の旅を設定。途中でゲームロッジに宿泊し、最後は大西洋沿岸にある19世紀ドイツのハンザ同盟都市、スワコプムンドで旅を終えます。7月はケープタウンからダルエスサラムまで14日間コースを設定しています。南アフリカはもちろん、ジンバブエ、ザンビア、タンザニアを巡るアフリカ満喫の旅で、鉄道旅行ファンの間では「一度は乗ってみたい」コースとして憧れの的になっています。