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社内副業や公募を増やす前に。
若手社員が「社内キャリア」を見つけるための、最初の一手

公開日: 企業イベント

若手社員が「なんとなく将来が不安」と熱量を落としてしまう背景には、さまざまな要素があります。なかでも見落とされがちなのが、他部署でのキャリアがイメージできないという、組織の「キャリア解像度」の低さです。

一歩、社外に目を向ければ可能性が溢れて見える一方で、自社の他部署はブラックボックス化しています。その根底にあるのは、若手社員が自社で働く将来像をリアルにイメージするための情報が不足しているという構造的な課題です。

では、人事は具体的にどのような手段を取るべきなのでしょうか。若手社員が自社で再び熱量を取り戻し、「もう一度新しく成長できる選択肢」に出会うためのアプローチを解説します。

動き出す前に知っておくべき、陥りがちな「アプローチの罠」

若手社員が自社でキャリアを描くためには、文字情報ではなく、手触り感のある「生のキャリア情報」をオープンにしていくアプローチが有効です。しかし、この必要性に気づいたとき、多くの企業が良かれと思って真っ先に走りがちな施策があります。それは、部署紹介資料をイントラネットに再掲載したり、「とりあえず他部署と繋がろう」といった目的の曖昧な交流イベントを企画するといった施策です。

これらは、成長の停滞に悩み「自分はこのままでいいのだろうか」とキャリアへの危機感を抱いている若手社員にとって、解決の糸口にはなり得ないという壁があります。
彼らが求めているのは、表面的な交流などではなく、「自社で得られるリアルな成長機会」であり、実施後も実態が見えないままでは、いくら情報を並べても本質的な課題解決には至りません。

また、他部署へチャレンジする機会を作ろうと、「社内公募制度」や「社内副業(兼務・20%プロジェクト)」を大々的に打ち出す企業もあるかと思います。このような制度は、すでに「次にやりたいこと」やキャリアの方向性が明確に決まっている社員にとっては、非常に有効な施策です。しかし「なんとなく将来が不安」と感じている若手社員に対して、最初からこのような施策でアプローチするには、見落としがちな「罠」が潜んでいます。

なぜなら、いくら制度が用意されていても「そもそも自分に何が向いているのか、どんなキャリアが良いのか」を迷っている段階の社員にとっては、募集要項の文字情報だけでは「自分に合ったスキルが本当に身につくのか」の確信が持てないからです。また下手に手を挙げて『思っていたのと違う、望まない未来になってしまったらどうしよう』という恐怖もあり、いきなり実務への挑戦に踏み切るには不安が大きすぎるとも考えてしまいます。その結果、制度そのものに対しても無関心になってしまったり、挑戦しようとしてもその一歩を踏み出すことができない可能性があります。

彼らが求めているのは、形だけのイベントやいきなり決断を迫る制度の提示ではありません。次に自分が目指すべきキャリアのキラキラした表面的な情報だけではなく、配属後のギャップに繋がる「壁や苦労」も含めた、裏側にある「リアルな苦悩」や、「実際にどんな力が身につくのか」といった具体的なキャリアビジョンを描ける情報を知る機会です。そのため、今人事が行うべきは、単なる情報のバラ撒きや制度の提示ではありません。若手社員が求める情報に、社員自身がアクセスできる「場」の設計なのです。

制度の前に「場」を作る。人事が仕掛ける具体的アクション

では、人事が行うべき「場」の設計とは、具体的にどのようなものなのでしょうか。

それは、自分の将来に漠然とした不安を抱え、「このままでいいのだろうか」と静かに悩んでいる若手社員に対して、まずはそのモヤモヤを解消し、視野を広げるための『情報収集の場』を「リアル」で用意することです。他部署の仕事内容やそこで得られるキャリアの選択肢を、「もし自分がそこにいたら」と自分事として想像できる「社内キャリアのオープン交流の場」です。
ここでいう「交流の場」とは、前述したような単なる懇親や目的が曖昧なイベントではありません。人事がハブとなり、若手の心を動かす「3つの仕掛け」を組み込んだ場です。

なぜ、この場作りを「リアル」にこだわるべきなのでしょうか。それは画面越しに文字を読ませるだけでは、仕事の本当の面白さや空気感といった「生の情報」を、熱量がある状態で届けることは難しいです。また、デジタル上の発信は「流し見」されがちですが、リアルな場であれば、人事がハブとなって現場の間に直接入り、若手社員の手元へ「情報が確実に伝わった」ということまでその目で確認できるからです。

さらに人事がその場でハブとなることで、ただの部署紹介で終わらせず、若手社員のリアクションを見ながら「彼らにどんな適性があるか」を見極め、その場で中立なキャリア相談へと滑らかに繋ぐ橋渡しが可能になります。

この人事がハブとなるリアルな場でこそ活きる、若手の心を動かす「3つの仕掛け」を見ていきましょう。

「身につくスキル」を主役にしたブース設計

従来の部署紹介イベントにありがちな、「我が部署は〇〇という事業を担っており、組織図は、・・・」といった組織都合の解説は一度手放してみてください。各ブースで伝えるべき情報は、「この部署にいけば、次にどんな新しいスキルが手に入り、どう成長できるのか」という、若手目線の成長ステップです。事業内容ではなく「獲得できるスキルのロードマップ」を前面に出すことで、若手社員は自分の未来と重ね合わせて他部署を見ることができるようになります。

年の近い先輩社員による「泥臭いリアル」の開示

ブースに立たせて説明を行わせるのは、決して管理職ではありません。あえて「年の近い先輩社員」をアサインします。そして彼らに、やりがいや華やかな実績だけでなく、「今どんな壁にぶつかっていて、どんな厳しさがあるか」という手触り感のある生のリアルをフラットに語ってもらいます。この客観的で嘘のない情報こそが、外に溢れる綺麗な広告以上の圧倒的な信頼性と解像度となり、若手社員の胸に突き刺さるのです。

その場で人事と話せる「キャリアの特設相談窓口」の設置

この交流の場のすぐ真横に、人事直結の個別相談ブースを設けます。他部署のリアルな情報に触れ、「え、うちの会社にこんなに面白い挑戦ができる部署があったんだ」と視野が広がり、熱量が高まった瞬間を逃してはいけません。その熱量のまま、「実は今の部署でこういう停滞感があって……」と、自分の本音を安心して吐き出せる安全な動線を、その場で人事自らが確保するのです。

「社内キャリアの交流の場」がもたらす、2つの大きなベネフィット

「社内キャリアのオープン交流の場」を設けることは、ただ若手を喜ばせるためのものではありません。組織の停滞感を打破し、人事自身を強固なハブへと変える、非常に大きなメリットをもたらします。

閉ざされた視野が広がり、自社を見直すきっかけになる

最大のベネフィットは、「この会社には自分のやりたい仕事がない」という、情報不足から生じた誤解を解くことができる点です。

文字情報ではなく、泥臭さや厳しさも含めた他部署の「生の情報」に触れることで、若手社員の頭の中で凝り固まったキャリア観は揺さぶられます。

もちろん、この場に参加したからといって、全員が「行きたい他部署」をすぐに見つけられるわけではありません。中には、本当に自分がやりたい方向性は社内にはない、と再確認するケースもあるでしょう。

しかし、たとえ部署異動という決断をしなくても、他部署の異なる視点や仕事の進め方に触れることは、若手社員にとって大きな転換点になります。
「別部署から見たら、自分の日々の業務にはこんな価値があったんだ」と今の仕事の意義を再発見できたり、「あの部署の課題解決のやり方を、自分の部署でも取り入れてみよう」と新たな考え方のエッセンスをもらえたりする、それだけで、なんとなく将来が不安という停滞感からの脱却に繋がります。

「他社に環境を変えなくても、この会社でもう一度新しく、自分の成長を加速させられる。今この会社にいることこそが、自分の将来への一番の投資になるんだ」と、自分の未来にワクワクし始める。このような前向きな思考が少しずつ芽生えることこそが、若手のモチベーションの低迷を改善へと導く第一歩となります。

新たな「キャリアの相談場所」が確立される

もう一つの重要なベネフィットは、「自部署の利害関係から解放された、キャリアの相談環境」を組織内に確立できる点です。

若手社員にとって、評価権を握っている自部署の上司に対して「今の仕事に成長実感がない」「他部署の仕事に興味がある」と本音を漏らすのは、どれだけ心理的安全性があったとしても、少なからずリスクと捉えてしまいます。だからこそ彼らは、上司に隠れて社外の選択肢を探し、ある日突然辞めていくのです。

人事がその場で相談窓口として機能することで、若手社員は「本音を話しても大丈夫だ」という安心感が生まれます。

自部署という狭い範囲でのキャリアだけではなく、中立かつ客観的な人事の視点から、「今の自分のスキルを、次にどの部署でどう伸ばすか」という成長の方向性を一緒に示していくことができます。その結果、若手社員が一人で孤独に悩み、社外へと逃げ込んでしまう前に、社内でのキャリアの幅を広げるきっかけを作ることができるのです。

点と点を結ぶ、人事が「ハブ」となる意味

先述した通り、若手のキャリアサポートやモチベーションのケアを、現場の管理職だけに委ねるのには限界があります。

彼らも決して若手を支えたくないわけではありません。ただ、日々の業務に追われる中で、他部署の具体的な仕事内容やそこで身につくスキルといった「社内にある多様な選択肢」を、そもそも知らないのが実態です。自身が知らない選択肢を部下に提示することは不可能なため、結果としてキャリアの相談は自部署の狭い範囲での話となってしまいます。

だからこそ人事は、社員が自発的に動き出すのを待っているだけの状態から、脱却する必要があります。今のまま現場を孤立させていては、組織の機会損失は膨らみ続ける一方だからです。

人事が情報のハブとなり、若手社員が本音で対話できる「解像度の高いリアルな場」を自ら用意することは、管理職が知らなかった社内の選択肢を可視化し、現場の負担をすくい上げることに直結します。同時に若手にとっても、仕事をこなすだけの状態から、社内にある多様な選択肢をヒントに、自ら「次の成長の道」を見出していく自立のきっかけとなるのです。

このようなアプローチが「なんとなく将来が不安」という若手社員の声を解消し、「この会社にいることこそが、自分の将来への一番の投資になる」という確信へと変えていく最初の一手となるのではないでしょうか。

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