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パーパスを「知っている」だけで終わらせない。
行動変容を導く評価制度のアップデート

公開日: 企業イベント

近年、多くの企業が「パーパス」を掲げる一方で、現場では「言葉を知っているだけ」という形骸化に悩む人事担当者が少なくありません。

理念の唱和やメッセージの発信といった「伝える工夫」だけでは、現場の行動を変えることには限界があります。本当にパーパスを浸透させるには、日々の実務で自発的な行動を促す「組織構造」への落とし込みが必要です。

本コラムでは、社員の行動変容を引き起こす仕組みづくりのノウハウを詳しく解説します。

パーパス浸透の成否を分ける「評価制度」の重要性

効果的に現場の行動を変え、本来、パーパスを現場へ深く浸透させるには、採用、1on1、目標管理といった多角的な組織の仕組みが連動し、複合的に機能することが不可欠です。それら諸制度のなかでも、社員の具体的な行動変容を促す上で有力な打ち手の1つは、日常の根幹にある「評価制度」の見直しです。

多くの企業でパーパスが形骸化する背景には、経営陣が語る理想と、売上や利益などの数字ばかりを追う既存の「評価」との矛盾があります。いくら理想を唱えても、数字だけで評価される仕組みであれば、社員は評価される行動を優先するようになります。

結果として、パーパスは現場に負担を強いる「綺麗事」として片付けられてしまうのです。
パーパスを真に浸透させるために評価制度を変えるべき理由は、大きく2つあります。

行動評価への転換が「自分事化」を生む

評価制度にパーパスを組み込むことで、社員がパーパスを「自分事」として捉えるようになります。「パーパスに沿った行動やプロセス」を評価する仕組みへシフトすることで、社員は日々の仕事とパーパスのつながりを自然と意識するようになります。この意識の変化こそが、本当の意味での行動変容を生み出す原動力となります。

日々の「意思決定や選択」が変わる

評価が変わることで、社員の日常的な判断基準がアップデートされます。
例えば「売上は上がるがパーパスに反する選択」と「短期的な利益には繋がりにくいものの、パーパスに合致する選択」の岐路に立たされたとき、評価制度にパーパスが組み込まれていれば、社員は過度に目先の利益にとらわれることなく、パーパスに沿った最適な道を選びやすくなります。

また、上層部の現場に対する「指示出しの基準」そのものに強固な一貫性が生まれます。「パーパスに沿った正しいプロセスを評価する」と約束しているので、社員は「目先の利益を優先しなくて本当に大丈夫だろうか」という不安を抱く必要がなくなるのです。

唱和やハンドブックが「頭での理解」を促すものだとすれば、評価制度の変更は「行動での実践」を促す強力なインフラです。

パーパスを評価制度に組み込むうえで陥りがちな「4つの罠」

パーパスを評価に連動させるアプローチは有効ですが、数値化しにくい「パーパスの体現度」を評価することは容易ではありません。設計を誤ると、かえって形骸化が進み現場の不信感を招きます。特に陥りがちな失敗として、次の「4つの罠」があります。

①あいまいな基準での評価
基準があいまいなまま定性的な言葉だけで評価しようとすると、評価者の主観や好みに左右されます。その結果、評価の理由が不透明になり、社員が納得できず組織への不信感に繋がります。


②自己評価シートへの丸投げ
期末の評価シートに項目を追加し、エピソードの記入を社員自身に任せる方法です。これでは実際の行動ではなく、文章の「見せ方の技術」が問われ、文章力のある人ばかりが得をして制度が形骸化します。また、書いて満足する一過性の取り組みで終わってしまいます。


③減点方式による取り締まり
「パーパスに沿っていない行動」を減点する仕組みです。人間は減点を恐れると、リスクを避けて無難な行動をとるようになります。パーパスの浸透に必要な挑戦や自発性を阻害する逆効果を生みます。


④無理な数値化・KPI化
定性的なパーパスを測ろうとするあまり、売上などの既存の財務指標や一律のKPIに無理やり落とし込んでしまう方法です。これでは、社員の意識が「数字を稼ぐこと」に集中してしまい、目標は達成できても本来のパーパスの体現からは遠ざかってしまいます。数値だけが一人歩きし、パーパスが形骸化する原因になりかねません。

データが物語る「管理職と現場社員の認識ギャップ」

こうした罠に陥っている企業では、管理職側が「できている」と思っていても、現場の受け止め方は全く異なるというギャップが生じています。

Unipos株式会社の「パーパス浸透に関する調査2023」によると、「パーパスを体現する具体的な成果評価の基準があるか」という問いに、管理職の50.0%が「できている」と答えた一方、一般社員の同意はわずか34.5%でした。また、「パーパスに沿ったチーム目標があるか」についても、管理職の46.1%に対して、一般社員は25.0%に留まっています。

この結果は、現場の社員が「どう動けば評価されるのか、明確な基準がわからない」状態にあることを示しています。
売上などの業績評価は、数字という共通の指標があるため可視化が容易ですが、形のないパーパスを評価に組み込む場合は、「どのような行動が、どう評価されるのか」を徹底的に可視化し、現場と目線を合わせるプロセスが不可欠です。

成果だけの評価を越えて「パーパスの体現」を可視化する具体策

では、形のないパーパスを具体的にどう「可視化」すれば現場に伝わるのでしょうか。
ここからは、抽象的な言葉のままにせず、体現すべき行動への理解と共感を現場で深めながら評価制度へと組み込む、具体的な施策をご紹介します。

表彰制度:数字ではなくパーパスを体現した「プロセスと行動」を称える

表彰制度において、パーパスの自分事化を促すためには、単に数字の成果ではなく、パーパスや行動指針を最も体現したプロセスを称える表彰制度への刷新が必要です。

社会課題や現場の困難に「自分事」として向き合い、会社の存在意義を軸に生み出した「革新的な挑戦やパーパスを原動力にした行動プロセス」を表彰します。

目に見える実績以上に、パーパスを体現した行動や選択のプロセスを可視化し、スポットライトを当てることで、会社が評価したい「望ましい行動のあり方」を生きたお手本として全社に共有します。これにより、社員の評価への納得感と自発的な行動変容を強力に後押しします。

ピアボーナス制度:日常のバリュー体現を社員同士が称え合う

現場の目線でパーパスに沿った行動を可視化させる、社員同士が感謝や称賛を送り合うピアボーナス制度です。

日常の貢献に対し、メッセージと少額の成果給をリアルタイムに贈り合えるシステムを活用します。送信時に必ずパーパスを紐づけさせることがポイントです。これにより、具体的な行動事実が毎日ボトムアップで蓄積され、大きく成果が出なかった行動であっても正当にスポットライトが当たる好循環が生まれます。

その結果、社員が「自分の仕事を誰かがしっかり見てくれている」という安心感を抱くようになり、組織への納得感と、パーパスを軸にした部門を越えた協力体制が醸成されるようになります。

社内体験型イベント:プロセスを共有し合う「社内万博」

ここまでご紹介した評価や称賛の仕組みに加え、体験を通じて具体的な行動事例を共有し合う場を設けることも有効です。

その一例として、売上や数字ではなく、そこに至るプロセスを共有し合う「社内万博」のような体験型イベントがあります。

各部署がブースを構え、パーパスに沿った意思決定や泥臭いプロセスをプレゼンします。ここで重要なのは、人気投票やアピール合戦を防ぐルール作りです。

一般社員の投票は「応援」に留め、人事評価に関わる審査は他部署のマネージャー層が客観的に行う仕組みを取り入れます。さらに、明確な審査基準を設け、実際の評価データへと連動・反映させます。この仕組み化により、不公平感をなくし「正しいプロセスこそが評価される」というメッセージを組織全体に根付かせることができます。

~これからの組織が目指すべき「パーパス評価制度」の3つの本質~

これらの施策をはじめとした、パーパスが機能する評価制度の本質は次の3点に集約されます。

【役割の刷新】
パーパスを単に給与額を決めるための定規ではなく、従業員の主体的な行動変容を引き出すためのツールへと再定義します。


【評価対象の変更】
数字の裏にある「プロセス」の評価 売上数字という結果の良し悪しだけで判断せず、そのプロセスがパーパスに沿った正しい選択であったかを評価する仕組みへとシフトします。


【運用の多面化】
上司だけの視点に頼らず、現場の社員同士が認め合う仕組みを取り入れることで、組織を支える影の貢献やバリューの体現が表に現れ、納得感の高い評価を生むための参考情報となります。

「行動」が評価される仕組みが、組織に引き起こす2つの好循環

これらの施策を組織構造に組み込むことで、次の2つのメリットが生まれます。

目指すべき行動の「解像度」が上がる

抽象的な文言をいくら説明されても、社員は行動に移せません。しかし、パーパスを体現した具体的なプロセスが可視化されることで、「どのような行動をとればよいか」を現場が直感的に理解できるようになります。

パーパスが「自分事の行動」として現場へ定着する

社員同士がパーパスに沿った行動を認め合い、そのデータが評価に連動することで、パーパスは現場の共通言語に変わります。上司が見落としがちな実直な貢献や正しいプロセスが可視化されるため、評価への納得感が高まり、社員は安心してパーパスを軸にした挑戦を選択できるようになります。

このように、パーパスは掲げるだけのスローガンではなく、社員の行動を支える「評価基準」として機能させることで、初めて意義をなします。

「知っている」という認知の段階を突破し、本当の行動変容を引き起こすためには、組織構造、つまり「評価制度」に深く落とし込み、目指すべき行動を可視化することが必要なのです。

パーパスを「言葉」で終わらせず、組織の未来を自走させる「原動力」にするために、まずは小さな「可視化の場」づくりから、新しい評価の仕組みを整えてみませんか?
現場の熱量と納得感を味方につけたその一歩が、組織の未来を大きく変える確かな推進力となるはずです。

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