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パーパスが現場に浸透しない本当の理由。
見落としがちな「組織構造」の課題

公開日: 企業イベント

ー掲げる段階から「実践」へと結びつけるフェーズへ ー

近年、多くの企業において「パーパス」の策定や見直しは一通り進み、すでに一定の企業で行き渡った状態となりました。パーパスとは、社会に対する企業の存在意義であり、すべての企業活動の起点となるものです。そのため、現在は単にパーパスを掲げるだけの段階から、日々の意思決定や実務における「実践」へと結びつけることが、多くの企業において求められるフェーズへと移行しています。

しかしながら、パーパスを掲げる段階から「実践」へと結びつけることは決して容易ではありません。その背景を紐解いていくと、「会社が掲げる理想」と「実際の評価基準や意思決定のあり方」が矛盾しているという、組織の構造的な要因が浮かび上がってきます。

本コラムでは、多くの企業が見落としがちな、パーパスが機能しない「組織構造」の問題にスポットを当て、今見直すべき点についてお話いたします。

第1章:なぜ?熱心に伝えても現場に響かないパーパスの形骸化

経営陣から現場でのパーパス浸透を求められても、現場からは「業務が忙しくてそれどころではない」という声が挙がる。唱和や社内報などあらゆる施策を打っても、パーパスが表面的に「知られているだけ」で終わり、現場の行動が変わらない。

パーパス推進や人事の担当者として、現場との間でこのような悩みを抱えたことはありませんか。 熱心にメッセージを発信しているからこそ、なぜ現場に響かないのか、次にどんな一手を講じるべきか、アプローチに悩むケースは少なくありません。

組織規模の大きな企業が直面する課題

特にエンタープライズ企業などの組織規模が大きい企業などでは、以下のような課題が浮き彫りになっています。

1.部署の多さによる「実行スピード」の停滞
組織が大きく関係部署が多いために、浸透施策を決定するだけでも膨大な時間がかかります。スピード感を持って推進したくても、社内の調整に追われ、思うようにパーパスの浸透を進められないというジレンマを抱えています。


2.経営と現場の「距離」による熱量の希薄化
組織のレイヤーが多すぎる大企業では、経営陣の熱いメッセージも現場に届く頃には、徐々にその熱量が失われてしまいます。結果として、現場では他人事のように冷ややかに受け止められてしまいます。

このように、「パーパスを掲げること」と、「それを現場の実務に落とし込むこと」の間には深い溝が存在しているのが現状です。

第2章:単に「伝える」だけでは超えられない「自分事化」の壁

このような状況のなかで、多くの推進担当者は「パーパスが浸透しないのは、現場の意識が低いからだ」、あるいは「自分たちの伝え方が足りないからだ」と考えてしまいがちです。

その結果、「もっと現場の社員が行動に移せるような伝え方を工夫しなければいけない」と考え、次のような施策に力を注ぐことになります。

・朝礼やミーティングでの唱和を義務付ける
・パーパスの意義をまとめたハンドブックや冊子を配布する
・社内報や動画を活用して、経営層の熱いメッセージを発信する

しかし、どれほど熱意を込めて言葉を発信し、認知施策を重ねても、現場の行動変化にまで結びつかないケースが非常に多いのが実情です。

実態調査のデータが示す「自分事化」の壁

ここで、アイディール・リーダーズ株式会社が発表している「パーパスに関する実態調査」のデータを見てみましょう。

「自社のパーパスに関して十分に理解・自分事化する機会 を得られているとどの程度感じますか?」

調査によると、パーパスについて「十分に理解・自分事化する機会を得られている」と実感している従業員は、わずか約18%にとどまるという結果が出ています。

参考:アイディール・リーダーズ株式会社「パーパスに関する実態調査」

ここの調査結果が示すように、多くの従業員が「自分事化」の壁の手前で立ち止まっているのが実態です。
では、なぜ自分事化できずに「パーパスの形骸化」が起こってしまうのか。その背景には、単にメッセージを「伝える」だけの施策に終始してしまっているという、根本的な原因が隠されているのです。

第3章:現場が冷めてしまう根本原因
ー理想と現実の評価・意思決定における矛盾ー

これほど熱心にパーパスを伝えているにもかかわらず、なぜ現場に浸透しないのでしょうか。ここでは、現場が冷めてしまう「構造的な真因」を紐解いていきます。

1. 意思決定基準としての定義への想い

多くの企業の人事や推進担当者は、パーパスの役割を単なるスローガンとして掲げるのではなく、組織の「日々の判断基準」として明確に定義したいと考えているはずです。
しかし、現在の収益構造と、パーパスの内容が矛盾している場合、現場の社員は何を基準に選べばよいか判断に迷うことになります。

例えば、「売上は上がるが、パーパスの精神に反する選択」と、「短期的な売上には直結しないが、パーパスの理念に合致する選択」の岐路に立たされたとします。このとき、明確な意思決定基準が共有されていなければ、実際の事業選択においてパーパスが置き去りにされてしまいます。

つまり、現場がパーパスを意識できないのは、判断するための「物差し」が組織内に定義・共有されていないからなのです。

ー「本来目指したいパーパスの役割」と「現実の施策」のねじれー

パーパスを単なるスローガンではなく「日々の判断基準」として定着させたい一方、現場では事業部門が追う数字のKPI(売上目標)とパーパスが分断されています。

そのため現場の社員は「パーパスを意識したくても、目の前の数字を追わなければならない」というジレンマを抱えています。この「やりたいのにできない」という環境こそが、現場の熱量を奪い、パーパスを形骸化させる根本原因に他なりません。今求められているのは、言葉による啓発活動にとどまらず、組織の仕組みそのものを見直すことではないでしょうか。

売上だけに偏った評価ではなく、パーパス浸透におけるKPIも新たな評価基準として設定するなど、パーパスに基づいた行動や実務が正当に扱われる環境を構築することが必要です。

現場が「これなら納得して動ける」と実感できるあり方を整えることこそが、パーパスを自分事にするための最初の一歩となります。

2. 組織構造を構成する重要な要素としての「評価制度」

こうした日々の意思決定や事業選択を左右する組織構造において、特に重要な要素の一つが「評価制度」です。 社員が日々の業務において意識する行動基準は、綺麗事としての理念ではなく、自身の給与や賞与に直結する現実の評価システムにあるのではないでしょうか。

実際に、株式会社日本経済社が発表した「第3回パーパス(企業の存在意義)実態調査」(エスエムオー株式会社実施)によると、パーパスが「非常に実践できている」と実感している企業は、社員教育や研修といった活動にとどまらず、さらに踏み込んで「MBO(人事評価)」への落とし込みを徹底している割合が42.6%にのぼり、最も高い数値を示しています。

参考:株式会社日本経済社「第3回パーパス(企業の存在意義)実態調査

現状の多くの企業のように、実際の評価基準が売上数字やインセンティブに直結する短期成果ばかりであれば、パーパスは実務において意味をなさなくなってしまいます。現場がパーパスに背を向けるのは意識が低いためではなく、会社が用意したルールに従っているに過ぎない結果といえます。単に伝えるだけでなく、評価制度や個人目標に直結する仕組みの中にパーパスを明確に組み込むことこそが、実務での矛盾を解消し、形骸化を防ぐ決定的な境界線となるのです。

第4章:パーパスと「実務・判断・評価」を連動させる組織構造の構築

ここまでの議論から明らかなように、パーパスが現場に浸透しない最大の要因は、パーパスを評価制度、意思決定、事業判断に直結させられない組織構造にあります。

現場の日常ルールを規定しているシステムの再構築こそが、本当の意味での行動変容を引き起こす不可欠なステップです。これら「実務・判断・評価」の枠組みをシステムとして一体に整備し、評価制度や個人目標に直結する仕組みの中にパーパスを明確に組み込むことが鍵となります。

まずは、自社の評価ルールや判断基準が、掲げているパーパスと矛盾したものになっていないか、見直すことから始めてみてはいかがでしょうか。

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