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若手社員のモチベーションを引き出す―
「成果」の裏にある「プロセス」の可視化への仕組み

公開日: 企業イベント

「なぜ、仕事を覚えた若手社員ほど、挑戦の勢いが鈍るのか」―。

多くの人事担当者は、そんなジレンマを抱えてはいないでしょうか。確立した自分のやり方に安住し、伸びしろを見失う「慣れ」という名の停滞。
そんな「慣れによる停滞」を感じる若手社員ほど、日々のタスクの中で「さらなる高みへつながる手ごたえが薄い」「自分のやり方に固執してしまい、挑戦の機会を自ら制限してしまっている」という危機感を抱えています。

彼らの背中を何とか押したいと、人事側が華やかな「成果」ばかりを強調してはいないでしょうか。しかし、そのメッセージがかえって彼らを追いつめてしまいます。
結果ばかりが「神格化」されると、自分とは異なる別世界の人として距離を感じてしまうからです。

彼らの挑戦意欲を再び引き出すには、これまでの施策を見直し、彼らが作った「正解の殻」を破るための新しいアプローチが必要です。
本コラムでは、こうした「慣れによる停滞」と「成果への圧倒」に直面する若手社員の挑戦意欲をどう引き出すべきか、その支援のあり方を紐解いていきます。

氷山の一角という罠

なぜ多くの企業で「成果」ばかりが強調されてしまうのでしょうか。
多くのケースで、私たちは無意識のうちに「氷山の一角」に囚われてしまっています。

問題の本質は、この「成果」という氷山の一角だけを見せてしまっていることにあります。
目に見える成果は、確かに華やかに見えます。
しかし、その下には、何か月もの準備、予期せぬトラブルへの対応、数えきれないほどの失敗、そして泥臭い試行錯誤という、大きな「努力の塊」が隠されています。
この水面下のプロセスが見えないからこそ、若手社員は「結果を出せる人」を神格化し、自分とは異なる別世界の人として処理してしまうのです。

遠すぎる存在になってしまった先輩社員は、若手社員にとって「現実的な目標」として捉えにくくなり、「自分には到底真似できない」と挑戦を諦めてしまう要因になりかねません。
今組織に必要なのは、成果に対する価値観のパラダイムシフトです。

「すごい成果」を伝えるのではなく、「その成果に至るまでに何があったか」というストーリーを共有すること。泥臭い努力、予期せぬ失敗、そしてそこからどう這い上がったかという葛藤こそが、若手社員にとって価値のある「学びの源泉」となります。

「思考のプロセス」を継承する

「自分には到底真似できない」と感じてしまう最大の要因は、ロールモデルの「完成された結果」だけを見ようとしているからかもしれません。
しかし、重要なのは結果という「点」をコピーすることではなく、そこに至るまでの「プロセス」を追うことです。

先輩がなぜその判断をしたのか、どのような仮説を持ち、どんな葛藤があり意思決定したのかという「思考のプロセス」は、立場や経験が異なっても誰にでも再現可能な学びになります。
例えば、日常の1on1や振り返りの場で、単に「結果はどうだった?」と聞くのではなく、「どんな仮説を立てて、何に苦労して次はどうしようと思ったのか」という問いを投げかけてみてください。
先輩の華やかな成功談の裏側にある「地道な積み重ね」を分解し、自分の文脈に置き換える。これが、遠い存在を「身近なヒント」に変える鍵です。

また、こうした対話を通じて、若手社員自身も自分の試行錯誤を「失敗」として隠すのではなく、独自のデータとして記録し、振り返る習慣を持つべきです。
挑戦して壁にぶつかった経験こそが、将来の自分を形作る教材となります。

「挑戦の積み重ね」を称賛する仕組みへのアップデート

日々の対話や個人の記録といった取り組みは、挑戦の積み重ねを称賛する文化を育む大切な一歩です。
しかし、プロセス共有を個人の自発的な行動に任せているだけでは定着しません。
この「プロセスの可視化」を組織文化として定着させるために、有効なツールが「評価・表彰」の仕組みです。
多くの企業において、表彰は「結果」に対して与えられます。売上、利益、目標達成率―これらは数字として明確であり、評価しやすいからです。
しかし、結果のみを評価する仕組みは、若手社員が「失敗=評価の低下」と過剰に捉えてしまい、自発的なチャレンジが生まれにくくなる側面があります。

こうした背景から、成果の裏側にあるプロセスをいかに評価するか、表彰基準のあり方が問い直されています。
「成果」のみを評価するのではなく、「地道な積み重ねや工夫」そのものを評価・称賛するカテゴリを設けるのです。具体的には、インタビュー設計や表彰制度のあり方を変えていきます。

・「いきなり成功した話」を禁止する
成功体験発表において、登壇者には「順風満帆だった時期」ではなく、「どこで詰まったのか」「そのとき何を考え、どう乗り越えたのか」を語ることを必須条件にします。単なる成功談で終わらせず、壁にぶつかったときに「どう考え、どう乗り越えたのか」を共有してもらうのです。


・「前向きな失敗」を表彰する
新しいことに挑戦し、結果として失敗したとしても、そのプロセスで得られた学びや、次につながる工夫があれば、それを「グッド・トライ賞」として称賛します。失敗そのものを隠蔽するのではなく、公開し、分析した姿勢そのものにスポットライトを当てるのです。

表彰という形でスポットライトが当たることで、若手社員は「自分ならこうできるかも」「この悩みは自分も同じだ」と共感し、挑戦へのハードルが下がります。彼らにとって、先輩の失敗談は「自分も挑戦していいのだ」という安心感につながるのです。

文化として「試行錯誤をさらけ出す」

表彰制度の変更は、あくまで入口にすぎません。重要なのは、その先にある文化の醸成です。試行錯誤をさらけ出すことが、「かっこいい」とされる組織にするためには、先輩やリーダー層が自ら率先して自分の「弱さ」をさらけ出す場を作ることが、不可欠です。
「自分は最初から完璧だったわけではない。かつてはこんなに悩み、こんなに失敗した」という背景を、先輩たちが日常的に語る組織では、心理的安全性は飛躍的に高まります。

心理的安全性が確保された環境では、若手社員は「失敗しても致命傷にはならない」「次に活かせばいい」という感覚を持てるようになります。
結果として、挑戦の総量が増え、組織全体のイノベーションスピードも向上していくはずです。

若手の成長を加速させる、「プロセス」への称賛

「すごい成果」を称えることももちろん大切ですが、これからは、その裏側にあるプロセスにも少し目を向けてみると、組織の景色はもっと豊かに変わるかもしれません。
「そこに至るまでの葛藤」や「泥臭い試行錯誤」を、大切な資産としてみんなで分かち合うことで、組織は失敗を恐れずに互いに学び合える強いチームへと変わっていくはずです。
この視点の切り替えは、単なる施策の変革を超えて、組織のカルチャーそのものを再定義する一歩となるでしょう。

まずは、表彰制度から見直し、単なる成果だけでなく、挑戦のプロセスや工夫を称賛する新しいカテゴリを設けることで、若手社員が安心して成長できる環境作りをしてみてはいかがでしょうか。

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