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なぜ、1on1では本音が見えないのか?
―社内イベントを「個の本質」を捉える
投資に変える活用のヒント

公開日: 企業イベント

「部下やメンバーとの“心の距離”に戸惑いを感じている」というリーダーも多いのではないでしょうか。「定期的に1on1も実施しているし、表面上のコミュニケーションは円滑だ。しかし、彼らが本当は何にやりがいを感じ、何に不満を抱いているのか核心が見えてこない」。こうした閉塞感は、現代のマネジメント現場において共通の課題となっています。

本コラムでは、日常の関わりの中での上司・部下間のコミュニケーションが形骸化する原因を掘り下げ、一人ひとりに適した「正しい関わり方」を導き出す視点の切り替えと、具体的な活用のヒントをお伝えします。

7割が直面する「コミュニケーションの壁」

リーダーが感じる「部下の本音が見えない」という悩み。それは決して、リーダーの力量不足だけが原因ではありません。
エン・ジャパン株式会社が実施したアンケート調査によると、組織におけるコミュニケーションの実態が見えてきました。

ビジネスパーソンを対象とした調査では、「現在の上司または部下とのコミュニケーションについて課題を感じますか?」という問いに対し、全体の7割が「課題を感じる」と回答しています。(図1)

【図1】現在の上司または部下とのコミュニケーションに課題を感じますか?

さらに、上司・部下がそれぞれ具体的にどんな課題を感じているかという設問においては、双方の約4割が「相手との精神的な距離を感じる」と回答しました。(図2・図3)

【図2】現在、上司の方に伺います。
具体的にどんな課題を感じますか?
(複数回答可)

【図3】現在、部下の方に伺います。
具体的にどんな課題を感じますか?
(複数回答可)

また、上司側からは以下のような意見も挙がりました。

・仕事と私生活を完全に分ける意識が強く、私生活のことに触れるのがタブーのような空気感がある。(50代男性)

・心を開いて何でも話して欲しいと言ってはいるが、相手がこちらの役職等を考慮して忖度してしまうなど、本音で話すことが難しそうに思える。(50代男性)

つまり、「歩み寄りたいけれど、どう踏み込んでいいか分からない」という膠着状態になっているのです。

出典:エン・ジャパン株式会社 | ー『AMBI』『ミドルの転職』ユーザーアンケートー

日常の業務だけでは「個」が見えない理由

では、なぜこれほどまでに双方が「心の距離」を感じてしまうのでしょうか。
その要因を整理すると、以下のような現代特有の「3つの壁」が見えてきます。

要因①:物理的・制度的な壁
テレワークの普及により、雑談や偶発的な対面機会が激減しました。また、「ハラスメントへの過度な配慮」から相手への踏み込みを恐れるあまり、業務以外の対話を避けるようになっています。結果として、相手の人間性やモチベーションの源泉に触れる機会を自ら手放してしまっているのです。


要因②:役割の壁
職場において、社員は多かれ少なかれ「期待される役割」を演じています。「従順な部下」「有能なリーダー」といった肩書きに沿った振る舞いを優先し、自分自身の本来の性格や、譲れない価値観を心の奥に仕舞い込んでしまいます。


要因③:評価の壁
職場は常に「評価」が直結する場所です。評価権を持つ上司を前にすると、人は無意識に「正解」や「望ましいと思われる回答」を選んでしまいます。1on1という形式をとっていても、そこが「評価の場」である限り、本当の弱音や素の特性が表に出にくいのは当然のことと言えるでしょう。

「本質」とは、その人の行動の原動力となる価値観や、物事の捉え方のクセのことです。
例えば、「チームの成果に貢献したい」と願うタイプの人と、「自分の専門性を極めたい」と願うタイプの人では、同じ業務をお願いする場合でも、掛けるべき言葉やフォローのタイミングは全く異なります。
本来、マネジメントの成果を最大化するために必要なのは、スキルセットの把握だけではありません。その人が「どのような状況でストレスを感じるのか」「何に対して無意識に情熱を注いでしまうのか」といった、より深い階層にある特性の把握です。
しかし、上記で挙げた要因などにより、日常の業務という限られた接点だけでは、こうした多面的な「個人の解像度」を上げることは極めて困難なのです。

相手の本当の姿が見えないままでは、どれほど丁寧に言葉を尽くしても、それは空振りに終わってしまいます。
これを放置し続けると、上司が良かれと思って掛けた言葉が相手の負担になったり、的外れな期待が不信感を生んだりと、組織の土台を静かに削り取っていく可能性があります。

そこで重要になるのが、評価のバイアスがかからない「非日常の場」を、お互いの「素顔」に触れ、心の距離を縮めるきっかけにすることです。

社内イベントが、お互いの働きやすさを変える投資になる

前章で述べたとおり、日常の業務では見えない相手の本来の姿を捉えるためには、「業務上の役割から解放される場」を設けることが有効です。その解決策の一つが、社内イベントの活用です。

これまで社内イベントは、主に社員を労うための「福利厚生」や、「親睦」の場とされてきました。業務を離れ、社員が主役で楽しめる場は、組織にとって大きな意味を持ちます。
しかし、そこでの体験を「単なる親睦」で終わらせず、「相手をより深く知るきっかけ」として捉えることで、イベントの価値は更に高まります。

この「非日常」という場がもたらす価値は、大きく分けて2つあります。

①「無意識の行動」から生きた特性を知ることができる

評価の視線が届かない場では、社員の「無意識の行動」がふとした瞬間に垣間見えます。
例えば、共同作業を伴うワークショップや、役割をシャッフルしたレクリエーションなど、自然と素が出るような工夫がされた場では、以下のような「生きた特性」が顔を出します。

・想定外への反応
計画通りにいかない場面で、冷静に状況を判断するのか、あるいは周囲を鼓舞して突破口を探すのか。


・他者への配慮
指示されたわけでもないのに、誰かの困りごとに気づき、そっと手を差し伸べることができるか。


・こだわりのポイント
どの工程に時間をかけ、何に対して「面白い」という表情を見せるのか。

これらは日常の1on1で「あなたの強みは何ですか?」と問いかけても、なかなか言葉になってこないものです。「無意識の行動」には、本人ですら自覚していない強みや、ストレス耐性のヒントが凝縮されています。

②「共通言語」を得ることで心の壁を低くすることができる

もう一つの大きな効果は、上司と部下の間に「仕事以外の共通の思い出」ができることです。
日常業務の中では、会話のきっかけはどうしても「進捗確認」や「課題解決」に偏りがちです。しかし、イベントという非日常を共に過ごすことで、「あの時のワークショップでの意外な活躍」や「レクリエーションでのハプニング」といった、業務とは無関係なエピソードが「共通言語」として蓄積されます。

「あの時の〇〇さんは凄かったですね」といった共通の話題があるだけで、会話の心理的なハードルが下がります。この「共通言語」こそが、上司・部下間の空気感を和らげるクッションとなり、本音を引き出すための呼び水となるのです。

イベントを「ただ楽しかった」だけで完結させるのではなく、そこで見えた意外な一面や反応を、その人を理解するための「貴重な気づき」として蓄積すること。全力で楽しみを共有しながら、相手への理解を深める。この視点を持つことが、イベントを単なるコストから、お互いがより働きやすくするための環境作りへの投資に変える鍵となります。

解像度を上げ、一人ひとりに響く「関わり方」を導き出す

しかし、せっかく相手の意外な一面を知り、話しやすい土壌ができても、それを今後の関わり方に反映させなければ、組織としてのリターンは得られません。
イベントという非日常で得た「気づき」と「共通の思い出」は、日常のマネジメントという現場に還元して初めて価値を持つのです。深い相互理解により、部下への指示出しやフィードバックは、より具体的で説得力のあるものに変わります。

例えば、フィードバックの伝え方を個々人の性格に合わせてカスタマイズできるようになります。
イベントを通じて「人前での賞賛を好まない慎重なタイプ」だと分かれば、大勢の前で褒めるのではなく、あえて1on1で「あの時の配慮、見ていたよ」と静かに伝える。
あるいは「論理的な納得感を重視するタイプ」だと分かれば、感覚的な褒め言葉ではなく、その行動がどう組織に貢献したかを構造的に伝える。
相手の「受け取りやすい形」で言葉を届けることで、部下側には「この上司は、自分の本来の姿を正しく見てくれている」という強い安心感が生まれます。この安心感こそが心理的安全性を育む土台であり、日常業務におけるビジネスコミュニケーションの質を根本から変えていく原動力となります。

また、本人の志向に沿った「納得感のある役割」を与えられるようになります。
「あの時調整役を担ってくれたのを見て、バランス感覚に確信を持った。今度のプロジェクトでもその力を貸してほしい」
相手の価値観や本音にピントを合わせた関わり方は、相手の「やりがい」を直接刺激し、マネジメントの精度を大きく引き上げることにつながります。

もちろん、一つのイベントだけで全てが解決するわけではありません。しかし、相手を「一人の人間」として深く知ろうとする姿勢と、共有した時間が、組織の空気を変えていきます。
社内イベントは、働き方や意識の変化により見えづらくなった素顔を自然と引き出し、一人ひとりに響く「正しい関わり方」を導き出すための、最も近道となる投資なのです。
相手を深く知ることを諦めず、そのための場を戦略的に活用することが、これからの組織を強くするための礎となるでしょう。

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