危機管理(リスク管理)
海外出張において、土日祝の緊急対応はもちろん、情報配信から渡航データによる出張者の位置把握、トラブルサポート、安否確認まで、ニーズに合った危機管理をご提案します。

「今、本当に行かなければならないのか?」
緊迫する世界情勢の中、海外出張を控えた社員の背後で、切実な「家庭内の葛藤」が起きています。
2025年12月に実施した最新の意識調査によると、海外出張を予定・検討している社員のパートナー(配偶者)の9割が「渡航に対して不安を感じている」ことが判明しました。
さらに、7割以上が「出張を控えてほしい」と内心思いながら、そのうち4割は本人に言えずにいる実態も明らかになりました。
社員本人は「仕事だから」と割り切ろうとしても、家族の不安が心理的なブレーキ(ファミリー・ブロック)となっている現状が浮き彫りとなりました。
本記事では、400名のパートナーへの調査から見えた「家族の本音」と、企業が今向き合うべき「家族をも含めた安全配慮」のあり方を紐解きます。
【調査概要】
調査目的:海外出張に対する「家族の不安」と「企業の対策状況」の可視化
調査対象:パートナー(配偶者)に海外出張の経験・予定がある20代〜50代の男女
有効回答数:400名
調査期間:2025年12月
調査概要:株式会社ノウンズ(Knownsカジュアルリサーチ)
INDEX
海外出張における「家族の不安」は、もはや潜在的な課題ではありません。
調査では、昨今の国際情勢を鑑みて「パートナーに海外出張を控えてほしい」と感じている人は約7割を占めました。
そのうち、約3割が「実際に海外出張を控えてほしいと伝えたことがある」と回答しており、約3人に1人の家庭で、出張を巡る具体的な話し合いや反対意見が出ていることになります。
また、約4割は「伝えたいが言えていない」と回答しており、社員は帰宅後、言葉にされない家族の重圧を感じている可能性があります。
【図表1:ファミリー・ブロック(出張反対)の発生率】
(図説)
実際に「海外出張を控えてほしい」と伝えた、あるいは伝えたいと回答した家族は約7割を占めました。その多くが、ニュースでの事件報道をきっかけに不安を増幅させている。この「見えない拒否感」を放置することは、グローバルプロジェクトの停滞や離職に直結するリスクをはらんでいます。
なぜ、これほどまでに家族は敏感になっているのでしょうか。
調査の結果、こうした事件報道を見て「出張自体を控えてほしい」と強く感じる家族は27.8%に上り、行動制限を求める層を含めると80%以上が強い懸念を示しています。
これが「ファミリー・ブロック」の最大の引き金となっています。会社側が「テロや戦争の確率は低い」とロジカルに説明しても、家族が抱く「予期せぬ日常のリスク」への恐怖は拭い去れず、ここに対策のミスマッチが生じています。
【図表2:海外の治安情勢に対する家族の心理】
(図説)
昨今報じられる海外からの報道を受け、パートナーの渡航に「強く不安を感じ、出張を控えてほしい」と回答した割合は、全体の28%に達しました。地政学的な「有事」だけでなく、日常生活の延長線上にある治安不安が、家族にとって最大の心理的ハードルとなっている実態が浮き彫りになったのです。
一方で、企業の危機管理体制に対する家族の評価は厳しいものです。
「万が一の際、会社が社員を確実に救い出してくれる準備があるか」という問いに対し、「十分に準備・周知されている」と信頼している家族はわずか 17.3% に留まりました。 最も多かった回答は「準備はしていると思うが、内容はよく知らない(55.8%)」でした。多くの企業では、危機管理マニュアルを社員本人には共有していても、その家族までは届けていません。この「情報の断絶」こそが、家族の不安を増幅させ、結果として社員の海外赴任や出張への意欲を削ぐ根本原因となっています。
さらに約8割が「家族にも説明していたら不安は軽減される」と回答しています。
企業にとって、すでに投資している安全対策が、家族に伝えるだけで8割の不安を軽減できるという事実です。逆に言えば、伝えないことでそれだけの機会を損失しています。
【図表3-1:危機管理体制への家族の認識】
【図表3-2:対策開示による不安軽減効果】
(図説)
「有事の救出手段が準備されている」と信じている家族はわずか17.3%に留まりました。一方で、会社が「チャーター機の確保」や「24時間サポート」を導入し、それを家族に開示することで、約8割の家族が「不安が軽減される」と回答。家族が求めているのは、具体的な「救出のエビデンス」であることが明確となりました。
では、どうすればこの「家族ブロック」を解消できるのでしょうか。
調査では、もし勤務先が「緊急避難手段の確保(チャーター機等)」や「24時間日本語医療相談」を導入し、その内容を家族にも説明した場合、8割以上の家族が「不安が軽減される」と回答しました。
これからのグローバル経営において、企業は以下の2点をセットで推進する必要があります。
1.物理的な安全確保
民間機が止まっても帰還できる手段と、24時間つながる医療・相談窓口の確保。
2.家族への情報開示
安全対策を社外秘にせず、「当社はあなたの大切なパートナーをこうやって守ります」と家族に向けて明文化し、約束すること。
「社員を守る」義務は、今やその帰りを待つ家族の心理的安全性にまで広がっています。精神論や「大丈夫」という言葉ではなく、具体的なエビデンスに基づいた安全対策を家族と共有することこそが、2026年のグローバルビジネスを支える新しい「安全配慮」の形と言えるでしょう。