危機管理(リスク管理)
海外出張において、土日祝の緊急対応はもちろん、情報配信から渡航データによる出張者の位置把握、トラブルサポート、安否確認まで、ニーズに合った危機管理をご提案します。
海外出張はビジネスチャンスを広げる一方で、テロや暴動、大規模な自然災害、世界情勢が生む予期せぬリスクに出張者が巻き込まれる可能性があります。
皆さまの企業の危機管理体制は、「これまで大きなトラブルがなかったから大丈夫」「海外旅行保険に加入しているから安心」といった考えから後回しになっていたり、出張者個人の判断に任せきりになっていませんか?
本コラムでは、出張者が安心して業務に集中できる海外出張の危機管理体制の構築についてご紹介します。
冒頭でもお伝えしたような危機管理体制が不十分だと、多くの潜在的なリスクを抱えることになります。
ここでは、そのリスクに焦点を当てていきます。
①「有事の際、何をすればいいか、明確な連絡先はありますか?」
有事の際、出張者はどこに、誰に連絡すれば良いか即座に判断できるでしょうか? 現地での通信手段が途絶えたり、時差の関係で日本の連絡先と連絡が取りづらくなったりする可能性もあります。もし緊急時の明確な連絡先や手順がなければ、出張者は孤立し、適切な支援を受けられずに危険な状況に陥るリスクが高まります。これは結果として、出張者個人の判断に頼らざるを得ない状況を生み、大きな不安につながる可能性があります。
②「いざというときの判断は、誰が行うか決まっていますか?」
有事の際は刻一刻と状況が変わるため、迅速な判断が求められます。しかし、出張者任せの体制では、「この状況で避難すべきか?」「いつ帰国を判断するのか?」といった重要な決断を出張者個人に委ねてしまいがちです。不慣れな環境、情報の錯綜、精神的なプレッシャーの中で、個人が常に最適な判断を下すのは困難であり、誤った行動が大きな被害を招く危険性があります。
③「本当に安心できる備え、できていますか?」
「海外旅行保険に加入しているから、万が一のことがあっても安心」そう考えて、危機管理は十分だと判断していませんか?
一般的な海外旅行保険は、主に費用面の補償が中心で、テロや暴動、自然災害など、現地での緊急避難が必要な状況には対応できないケースが多くあります。そのような生命に関わるリスクがある中で、会社がどこまで安全確保に責任を持ち、いざという時に守ってくれるのかが不明確だと、出張者は大きな不安を抱え、パフォーマンスの低下を招く可能性があります。
このような状況が高いリスクを伴い、有事が発生してからでは遅いということはおわかりいただけたかと思います。企業は、従業員の安全を守る法的責任を負うとともに、さまざまなリスクを回避するためにも、海外出張の危機管理体制を整備する必要があります。
しかし、ただマニュアルを作成したり、システムを導入したりするだけでは、有事の際にその体制が十分に機能しない可能性があります。従業員一人ひとりの意識を統一し、企業として「何かあった時は必ずサポートする」という安心感を与えることも大切です。この「安心感」が、危機管理体制を実効性のあるものにし、出張者が安心して業務に集中するための鍵となります。
このように、出張者が安心して業務に集中できる環境が整っていれば、有事の際にもためらうことなく、必要な情報を共有し、助けを求めることができます。そうした信頼と安心感のある状況は、近年注目される心理的安全性の確保にもつながるでしょう。
出張者が安心して業務に集中できる環境を整えるため、危機管理体制を強化するには、出張者だけでなく管理者側も対策と対応を講じる必要があります。ここでは、それぞれの立場からするべきことを、具体的に解説します。
・事前情報の把握と準備
渡航先の基本情報、国際情勢、大規模災害や感染症のリスク情報を事前に確認し、社内の緊急連絡先や緊急時の対応マニュアルをしっかり把握しておきましょう。緊急時の避難方法、各国大使館・領事館の連絡先を控えておくことも重要です。オフラインで使える地図アプリのダウンロードもおすすめです。これにより、「何かあった時に、どこに聞けばいいか分からない」という不安を減らし、落ち着いて行動できる土台が築けます。
・現地での状況判断と柔軟な対応
常に周囲の状況に最大限の注意を払い、危険な場所や集会には近づかない、現地の警戒情報に耳を傾けるといった自己防衛意識を持つことが求められます。同時に、予期せぬ大規模な事態には柔軟に対応し、「自分でなんとかしなくては」と抱え込まずに、状況に応じて企業へ助けを求めることが重要です。
・緊急時の速やかな報告
万が一、有事に巻き込まれた場合は、自己判断で解決しようとせず、速やかに社内の担当部署や緊急連絡先に報告し、指示を仰ぐことが最優先です。自己判断による行動は事態を悪化させる可能性があるため、報告を徹底しましょう。この速やかな連絡が、有事の際の迅速な情報共有と対応を可能にし、結果として出張者自身の安全確保にも繋がります。
・危険情報収集と共有
出張者の渡航先の治安状況、感染症の流行状況、自然災害のリスク、各国の緊急体制などを常に最新で正確な情報で把握しましょう。この情報を出張者にも定期的に共有することが大切です。
また、危険レベルの変動に応じて出張計画の見直しや中止の判断基準を設けます。テロ警戒レベルの引き上げや感染症の警戒レベル変更時には、出張者に対し即座に情報提供を行い、不安な点があれば対応する場を設けるなどで、出張者が安心感を持ち、気軽に質問できる環境を整えましょう。
・緊急連絡体制の整備と心理的サポート
大規模な危機発生時を想定した緊急連絡体制を明確にし、24時間対応可能な窓口を設置するなど、出張者がいつでも安心して連絡できる環境を整備しましょう。また、有事の際は安否確認を行い、出張者からの連絡を待つだけでなく、会社から積極的に状況確認の連絡を入れましょう。避難勧告が出た場合は、社員の安全を最優先し、現地の状況に応じた具体的な避難指示を出します。出張者の精神面も考慮し、状況を冷静に把握した上で、適切なアドバイスと具体的な支援を提供することで、出張者は目の前の業務に専念できるようになるでしょう。
・定期的な研修の実施
危機管理マニュアルを設定し、海外出張に携わる部署、管理部署向けに定期的な研修を実施しましょう。海外出張における危機管理への意識を社員間で統一し、共通認識を醸成する上で不可欠です。また、事例や対応策を共有し、実践的なシミュレーションを行うことで、出張者が緊急時に冷静かつ的確な判断を下し、行動できる能力を養う場となります。研修の他に全社員がいつでも閲覧できる社内ポータルサイトの作成も有効です。
・外部の危機管理サービスの導入検討
先にお伝えした危険情報の収集や24時間対応などは自社内や管理者だけで対応するのは困難な点が多いため、外部の危機管理サービスの導入も検討しましょう。 専門的な知識や経験を持つ外部の力を借りることで、出張者がより安心して渡航できる危機管理体制を構築できます。
危機管理体制は一度構築しても、それが形骸化してしまっては意味がありません。常に改善し続けることが重要です。ここでは運用の体系化の重要性について触れていきます。
・緊急時の迅速な対応のため
有事の際に誰が、いつ、何を、どのようにするのかをマニュアル化し、社内で共有しておくことで、迅速に対応できます。例えば、具体的な運用フローや安否確認手順が明確であれば、情報が錯綜する中でも適切な行動が取れるでしょう。これにより、出張者にとっても「何をすれば良いか分からない」という不安を取り除き、具体的な対応への安心感を与えられます。
・変化するリスクへの適応のため
国際情勢の変化、新たなテロの脅威、未知の感染症の発生など、海外出張のリスクは常に変化します。定期的にルールを見直し、改善していくことで、常に最新の情報に基づいた実効性のある危機管理体制を保てます。過去のトラブル事例から学び、改善策を講じることは、最新の知識と情報を組織全体で共有し、常にアップデートしていく文化を育み、それが結果的に出張者の安全と安心に繋がります。
・企業全体での意識向上のため
危機管理は、一部の管理者だけでなく、出張者を含む全社員が自分事として捉える文化を育むことが不可欠です。社内研修などを継続して行い、危機管理の意識を高めていくことで、部署間の連携もスムーズになり、より強固な危機管理体制が築かれます。これにより、出張者は「何かあったら会社全体で助けてくれる」という強い安心感を持ち、安心して業務に取り組めるようになるでしょう。
海外出張における危機管理は、企業の安全配慮義務という法的観点からも、単なる危険回避に留まらない重要な課題です。出張者が安心して業務に集中できる環境を整えることは、最大限の能力を発揮するために不可欠です。出張者任せの体制から脱却し、企業全体で危機管理に取り組むことで、出張者は安心して業務に集中でき、結果として企業にも「生産性の向上」「離職率の低下」「企業のブランドイメージ向上」などさまざまなメリットが見込めます。
この機会に、貴社の危機管理体制をもう一度見直してみてはいかがでしょうか。