新しい修学旅行・研修旅行のカタチ
SDGsを取り入れるなど時流に合わせた新たな試みを盛り込みながら、旅の楽しさを残したまま、学生自らが主体的に学び、解決していく探求型修学旅行を提案いたします。

世界遺産と聞くと、遠い歴史や美しい景観を思い浮かべるかもしれません。
世界遺産は旅行会社にとって極めて重要な観光資源です。ゆえに、旅行会社には世界遺産の価値を多くの人に伝え、保全保護する責任があると考えます。
そして、一見あまり関係なさそうな世界遺産とSDGs。
しかし、世界遺産の一つ一つを深く学んでみると、驚くほど具体的にSDGsの活動そのものが見えてきます。世界遺産活動とSDGs活動には実はとても深い関係と多くの学びがあります。
INDEX
国連の「専門機関」であるユネスコは、世界遺産を人類共通の宝物であり、国際社会全体で協力して保護し、未来へと継承していくべきものであると定義しています。
そんな世界遺産の価値を学び、守り、伝えていく一連の試みが世界遺産活動です。
また、国連が定めた「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)」の達成に向けた具体的な取り組み、それがSDGs活動です。そしてSDGs目標を達成するために「持続可能な社会を担う人材を育成する教育」それがESDです。
「今と未来を、より良いものにして次の世代へ渡したい」という、共通した一つの理念が世界遺産とSDGsにはあります。
世界遺産にはいくつかの種類があります。
歴史的な建造物などの「文化遺産」や、雄大な自然景観である「自然遺産」、その両方の価値をあわせ持つ「複合遺産」もあります。それ以外にも危機遺産や負の遺産と呼ばれるものがあります。
危機遺産とは紛争や戦争による破壊、自然災害による破壊、開発による景観の悪化など危機にさらされている遺産です。今まさに助けを求めている遺産です。
そして負の遺産とは紛争や戦争、人種差別や奴隷貿易など、人類が歴史上で犯してきた過ちを記憶にとどめ繰り返さないよう教訓とするための遺産です。
文化遺産を探究すると様々な文化や宗教にとって重要な遺産を知り探究し、保全することは世界の相互理解を深め、すべての人が豊かで充実した生活を目指す心を育みます。この学びは、下記のSDGs活動につながると考えられます。
・目標10:人や国の不平等をなくそう
(多様な文化や背景を持つ人々を尊重する)
・目標11:住み続けられるまちづくりを
(歴史的遺産を守り継ぐ)
・目標17:パートナーシップで目標を達成しよう
(地域や国の垣根を越えて協力する)
自然遺産を探究すると、地質学や生態学を学び、それにより地球の自然資源を保護し、気候変動や環境破壊に対処する目標が明確になります。2025年夏、日本でクマによる被害のニュースが頻繁に報道されました。その背景には世界遺産の知床が持つ「海から山へと命がつながる」独特の生態系の変化などと大きく関係しています。
この学びは、下記のSDGs活動につながると考えられます。
・目標13:気候変動に具体的な対策を
(生態系変化の根本原因へ向き合う)
・目標14:海の豊かさを守ろう
(海の異変が陸の生態系に直結することを知る)
・目標15:陸の豊かさも守ろう
(野生動物と人間が共生できる環境を守る)
負の遺産のゴレ島は奴隷貿易という人類の過ちを繰り返さない教訓としての世界遺産です。
「奴隷制度は過去のものだ」と思いがちです。ですが、形を変えた「現代奴隷制度」と呼ばれる問題が、今この瞬間も世界に存在している現実をご存知でしょうか。それは、現代社会に潜む搾取や強制労働、強制結婚、児童労働などです。例えば「フェアトレード」製品を学び選択するといった、具体的な行動はこの様な現代の問題の解決の糸口となります。
この学びと行動は、下記のSDGs活動につながると考えられます。
・目標1:貧困をなくそう
・目標2:飢餓をゼロに
・目標3:すべての人に健康と福祉を
・目標4:質の高い教育をみんなに
・目標5:ジェンダー平等を実現しよう
・目標6:安全な水とトイレを世界中に
3つの例を紹介させていただきましたが、ほんの一例です。2025年8月現在、世界遺産は1,248件、このうち日本は合計26件が登録されています。この一つ一つに多くの学びと探究とそして課題があります。1,248通りの「生きた教科書」です。
私たちは、生徒がこの中から一つでも惹きつけられる世界遺産を見つけ、それを知り、課題の解決につながる新たな価値観を考え、行動するために必要なプロセスをサポートします。世界遺産を軸にしたESD(持続可能な開発のための教育)を実践するため、以下のようなプログラムを開発しています。
修学旅行を通して知識のインプットや思い出作りにとどまらない、訪問先が抱える「生きた課題」に触れ、自分事として向き合う「探究の旅」を提供します。例えば、美しい自然や生態系を守るための環境のこと、大切な伝統を未来につなぐこと、そして平和についてなど。
生徒たちには、現地で何を深掘りしたいかという「問い」を持って旅に参加してもらいます。
私たちは世界遺産 原爆ドームのある広島、その他、長崎、沖縄そしてベトナムなどの修学旅行においては何十年も前から平和学習を学んできているはずです。にもかかわらず、今もなお戦争はおきています。唯一の戦争被爆国である日本は核兵器禁止条約を批准していません。「知っている」ことと、「実際に行動する」ことの間には、少し距離があるのかもしれません。知らなければ何も始まりません。
しかし「知る」だけで、未来を変えるのは難しいこともあると思います。だからこそ大切にしたいのは、学んだ教訓を忘れないように、「自分事」として考え続けてみることです。
社会課題から目をそらさず、旅先で感じた課題を持ち帰り、日常の中で「自分にできること」を考え続ける。修学旅行は、その第一歩を踏み出すための絶好の機会となりえると思います。
様々な課題をかかえる「世界遺産」と、私たちの未来の目標である「SDGs」を結びつけて考える素敵なコンテストがあります。それが、世界遺産検定事務局が主催する中学生・高校生向けの課題探究型コンテスト「世界遺産×SDGsチャレンジコンテスト」です。私たちは、このチャレンジに挑戦する生徒さんたちを、応援したいと思っています。
このコンテストでは、生徒さん自身がテーマとなる世界遺産を選びます。
そこにはどんな課題があるのか、どうすれば解決できるのかを、SDGsの視点から考え、小論文やプレゼンテーション動画で発表します。
世界遺産をテーマにすることで、生徒は異文化やグローバルな課題に触れ、自ら調べ、考え、発信する力を育むことができる。そして「学びの成長」を、誰かに向けて発信する機会は表現力を培います。またその発表を、専門家の方々がしっかりと受け止めて評価してくれる機会となります。
「自分の思いが伝わった!」という達成感は、きっと生徒の大きな自信となり、次の挑戦への力になるはずです。さらに、他校の生徒さんたちが考えた、自分とは違う視点のアイデアに触れられる機会もあります。お互いに刺激を受けながら、一緒に成長できる機会となるはずです。
コンテスト参加に向けて世界遺産を常に扱うエイチ・アイ・エスがサポートします。私たちは常に世界遺産に触れ、その魅力や現地の姿をたくさんのお客様にお届けしてきました。「世界遺産という学びの場」をよく知る旅のプロフェッショナルです。生徒さんがコンテストでテーマに選んだ世界遺産へ「実際に行ってみたい」。その想いを形にできることこそ、私たち旅行業が持つ一番の強みです。訪れるだけではなく、そこで得たい体験の機会もサポートします。
余談ではありますが、「世界遺産検定」という試験があるのをご存知でしょうか。
世界遺産の大切さを伝えるための教育や情報は、もちろん世界各国で行われています。
ですが、知識を問う「検定」という形にしているのは、どうやら日本独自の取り組みのようです。
もし、この日本独自の世界遺産検定で学んだ知識を持って、いつか世界の様々な場所を訪れたならばガイドブックに載っている情報以上に、その土地の歴史や価値を深く感じられるかもしれません。そして何より、現地で出会った人との会話の中で、「この場所のこと、日本で勉強してきたんです」と話すきっかけになる。知識が人と人をつなぎ、旅を一層豊かにしてくれる。そんな未来を想像するのも、なんだか楽しいものですね。
エイチ・アイ・エスには 「スタディツアーデスク」や「オンライン体験デスク」があります。スタディツアーデスクで目指しているのは、「旅を通じて、社会をよりよくする」きっかけを見つける旅づくりです。「ベトちゃんドクちゃん」で知られている、あのドクさんと直接お会いし、交流の機会を体験するツアーがあります。その体験をホーチミンへの修学旅行に訪れた高校生たちのプログラムに取り入れました。ドクさんの言葉はどんな教科書からも学べない、「本物の学び」だったと信じています。
「いつか、あの場所へ行ってみたい」 そう思っていても、様々な理由で旅に出るのが難しい時もあります。そんな時、インターネット環境さえあれば、世界とつながり、現地の空気に触れられるのが「オンライン体験ツアー」です。エイチ・アイ・エスのオンライン体験デスクでは、画面越しだからこそ伝えられる、深い学びの旅も用意しています。世界遺産「エルサレムの旧市街とその城壁群」は、残念ながら今、複雑な対立の中にあります。
私たちが提供しているのは、「壁で分断された国パレスチナ」ピーススタディツアーです。このオンライン体験ツアーで案内役を務めるのは、パレスチナで活動するボランティアの方です。現在は紛争の影響で現地に入ることができず、隣国ヨルダンから中継してくださっています。パレスチナの人々が置かれた「今」の現状を、切実に、そして懸命に伝えてくれるのです。またリアルタイムで多くの質問にお答えしています。この様なオンラインツアーの提供も可能です。
エイチ・アイ・エスには日本国内および海外に多くの支店があり、更に地方自治体にて観光促進の業務をするスタッフもおります。この様なネットワークを通じて世界遺産の学びと探究を様々な方法で提供します。
旅行会社が常に活用している世界遺産。その多くが観光としての活用でした。これからはその世界遺産を教育としても活用し世界遺産の価値を更に高めていきたいと思います。
未来の価値を創造する学びの旅を実現させたい。
株式会社エイチ・アイ・エス
法人営業本部 教育旅行事業グループ 高木理恵子
参考サイト