新しい修学旅行・研修旅行のカタチ
SDGsを取り入れるなど時流に合わせた新たな試みを盛り込みながら、旅の楽しさを残したまま、学生自らが主体的に学び、解決していく探求型修学旅行を提案いたします。

「新しい探究学習を提案したい!」
修学旅行は楽しい思い出作りだけではなく、多くの学校で「探究学習」と修学旅行が結びついています。観光地や歴史的な場所を訪れるだけでなく、その裏側にある「社会の課題」や「人々の想い」に触れることで、学びは劇的に深まります。
さらに教室では学べない「生きた社会のリアル」として、課題解決プログラムの意味合いも同時に持たせるにはどのように取り組むべきでしょうか。
INDEX
【企画頓挫から生まれた「三位一体」の原則】
弊社の修学旅行で使用されているツアータグは、レジャー旅行用の破れやすい紙製であり、その強度において課題を抱えていました。
この課題を解決するため、私たちは「ツアータグ」の刷新を提案しました。高強度な素材を使い、さらに生徒自身がデザインすることで当事者意識を持たせ、学習要素とアップサイクル素材を組み合わせた、付加価値の高い企画です。
しかし、このツアータグは、既存の安価なタグと比較して遥かに高コストとなりました。結果として、「金額が高すぎる」「収益性との不一致」という厳しい指摘を受け、残念ながら立ち上げを断念せざるを得ませんでした。
この痛恨の失敗こそが、私たちに事業の重要な本質を気づかせてくれました。
教育旅行の仕事は、単に安価な手配や人気のレジャースポットへの案内ではない。
「学校が抱える課題」と「生徒の成長機会の提供」を、「旅行会社として利益確保が見込める業務」として結びつける、双方が納得できる「三位一体」のプランこそが求められているのだという事です。
【修学旅行で「あえて作る」意義】
「トラベルグッズ」と聞くと、単なるお土産や記念品に思えるかもしれません。しかし、普通のトラベルグッズを作るのでは面白くありませんし、修学旅行で作る意味がありません。
私が目指したのは、普段の生活やレジャー旅行ではなかなか取り組むことができない「課題解決体験」を、修学旅行という非日常の場に入れ込むことです。
例えば、海外修学旅行では、現地を私服で行動する機会があります。先生が自校の生徒と認識するために、共通のアイテム(エコバッグやTシャツ、サコッシュなど)を身につけることは、生徒たちの安全な目印としての意味合いを同時に持たせることができます。
単なる記念品ではなく、教育プログラムの「核となるツール」として、機能性、安全性、そして探究学習の意義を全て満たす商材。それが「課題解決型のトラベルグッズ」だったのです。そこで、私は目的を「生徒の目印・機能維持」に据え直し、課題解決型の「漁具(漁網など)のアップサイクル」を考えました。
【海洋ゴミのアップサイクル × トラベルグッズ作り】
現在、地球規模で海洋汚染と水産資源の減少という深刻な問題に直面しています。具体的には、プラスチックごみなどによる汚染、気候変動による海の酸性化・水温上昇、そして乱獲による魚の資源枯渇が課題です。
世界の海に流出しているプラスチックごみは、推定で毎年1100万t。また、これらのプラスチックごみは、陸域から流出したものも多くある一方、海で発生し、海に廃棄されているものも少なくありません。その代表が「ゴーストギア」です。
「ゴーストギア」とは、漁網やロープ、釣り糸、浮きなど、海で使われているプラスチック製の漁具が、廃棄されたり、流出したりすることで、海洋ごみとなったものです。ゴーストギアは、世界で年間50万~115万tが海に流出していると考えられています。(環境省調べ)
| 順位 | R4 | R3順位 | ||
|---|---|---|---|---|
| 品目 | kg | 割合 | ||
| 1 | 木(木材等) | 1,720 | 21.7% | 1 |
| 2 | 漁網(漁具) | 919 | 11.6% | 11 |
| 3 | プラ製ロープ・ひも(漁具) | 861 | 10.8% | 3 |
| 4 | 硬質プラスチック破片 | 788 | 9.9% | 2 |
| 5 | ブイ(漁具) | 591 | 7.5% | 4 |
| 6 | ガラス・陶器 | 483 | 6.1% | 6 |
| 7 | 飲料用(ペットボトル)<1L | 426 | 5.4% | 5 |
| 8 | プラスチックその他(必須項目) | 296 | 3.7% | 9 |
| 9 | 発泡スチロール製フロート・ブイ | 268 | 3.4% | 7 |
| 10 | 飲料用(ペットボトル)≧1L | 236 | 3.0% | 13 |
出典:環境省 令和5年度漂着ごみ組成調査データ 取りまとめの結果について
SDGsの「海の豊かさを守ろう」という目標達成に向け、私たちは使われなくなった漁具を回収し、修学旅行中に使用できるトラベルグッズとして再生します。不要になれば産業廃棄物となるモノに新しい命を吹き込み、生徒が楽しみながらサステナブルな取り組みを実践できる思い出の品とするのです。
<①事前学習>
漁具の再利用を行う専門家による出張授業で、実際の海洋ごみの現状と課題を理解します。また、作成するTシャツやサコッシュのデザインを企画し共同制作をします。
<②体験学習>
作成したTシャツやサコッシュを、修学旅行中の必需品として実際に使用し、(安全管理と利便性も担保)その機能性を体感します。
<③事後学習>
実際に使用したグッズの機能性、デザイン、メッセージ性を生徒同士で相互評価し、この体験が自身の消費行動(日用品の選択、ごみの分別など)にどのような影響を与えたかを文章やデータでまとめます。
「海の危機を救う素材」として環境学習の集大成に位置づけ、生徒に「責任ある消費者(SDGs 12)」としての自覚と、日々の生活で持続可能な行動を実践する意識を根付かせます。
時代とともに修学旅行に求められるものは多様化し、その教育的役割は一層重くなっています。しかし、その核心は、生徒の成長という一点にあります。
私たちは、修学旅行を未来の地球と社会を考える教育プログラムとして再定義し、海洋ゴミ問題に触れ、自らの手でアップサイクルの実践を通じた「責任ある消費」を体験する場を創出します。
グローバル化した世界における生徒一人ひとりの進路も見据え、**単なる思い出を越えた『価値ある記憶』**を生徒たちの人生に残す。旅行会社だからこそ提案できる探求学習を、私たちはこれからも追求していきます。
株式会社エイチ・アイ・エス
法人営業本部 教育旅行事業グループ
並木麻美