あなたの会社の防災訓練、本当に意味がある?
形骸化から脱却する実践アイデア
毎年のように防災訓練を実施しているものの、「社員の意識や対応力が本当に向上しているのか分からない」「いざというときに役立つのか不安」と感じている経営層や主催者の方も多いのではないでしょうか。
「毎年恒例だから」「参加しないとまずいから」といった義務感で参加する防災訓練は、果たして従業員の命や事業を守る具体策になっているのでしょうか?
本コラムでは、形骸化しがちな防災訓練を“自分ごと”として捉え直し、組織の力を高めるための実践的なアイデアをご紹介します。
INDEX
防災訓練、実施しているだけで満足していませんか?
職場での防災訓練の実施・参加状況は?
企業規模別 防災訓練の実施率
年代別の防災訓練 参加率
株式会社MS-Japanが2023年12月に実施した「職場の防災対策」と「災害支援」に関する実態調査によると、職場での防災訓練の実施状況について、回答者の68%が「実施している」と回答しています。特に従業員1,000名以上の大企業では88%にのぼります。
一方で、訓練を実施している企業でも従業員の約5人に1人(19%)は「参加したことがない」と回答されています。さらに年代別の参加率を比較すると、参加率が最も高い年代は「50代以上」の86%で、最も低い年代は「20~30代」の63%という結果となり、若い世代ほど防災訓練の参加率が低い傾向が見られます。
これらのデータから、法的な義務や企業の社会的責任に対する意識の高まりにより防災訓練は実施されているものの、一部の従業員が参加していない現状は、その実施が形式的なものになっている可能性が高いといえます。
特に若年層の参加率が低い背景には、リモートワークやフレックスタイム制など多様な働き方の広がり、訓練内容が若年層にとって身近に感じられないこと、または訓練自体が従業員一人ひとりの関心に十分に対応できていないことなどが考えられます。
こうした状況は、訓練が「自分ごと」として捉えられていない、すなわち形骸化している兆候の一つともいえるのではないでしょうか。
あなたの会社は大丈夫?形骸化した防災訓練の3つのサイン
まずは、貴社の防災訓練が形骸化しているかどうかをチェックしてみましょう。
①参加者が「義務感」だけで動いている
「毎年恒例だから」「参加しないとまずいから」といった義務感だけで参加していませんか?従業員から「つまらない」「時間を無駄にしている」という声が聞こえるようであれば要注意です。
②内容が「経路確認」と「備蓄品チェック」で終わっている
本当に必要なのは、場所の確認だけではありません。実際の災害では、停電、火災、建物の損壊といったイレギュラーな事態が必ず発生します。このような状況下で生き残るためには、「とっさの判断力」や「チームでの連携力」が不可欠です。
③訓練後に「特に変化がない」
訓練で得た学びが定着せず、次の行動に繋がっていない場合は、形骸化されている可能性が高いです。
防災への意識を“自分ごと”に変える4つの実践ステップ
防災訓練を従業員一人ひとりが「自分ごと」として捉えられる学びの場に変えるためには、段階的なアプローチが効果的です。
ここでは、主催者がすぐに導入できる4つの具体的なステップをご紹介します。
①災害のリアルさを実感する(気づき)
まずは、災害が“自分にも起こりうること”としてリアルに感じられる機会を作ります。
実際の災害映像の視聴や、被災経験者による体験談の共有を通じて、危機意識を高めます。
「自分だったらどうするか?」と考えるきっかけを与えることで、訓練への主体的な参加意欲を引き出します。
②自分の知識・行動を確認する(学び)
次に、ケーススタディ討議(ケースメソッド)を活用します。
例えば「地震発生時にエレベーターに閉じ込められた」「帰宅困難者が発生した」など、実際に起こりうる災害時のシナリオを提示し、グループごとに「自分ならどう判断し、どう行動するか」を討議します。
また、備蓄品の場所や避難経路の確認など、基本的な知識や行動についても学び直す機会を設けます。
③判断力・連携力を養う(体験)
災害時意思決定シナリオ演習を実施します。
ファシリテーターが災害発生からの時系列で状況を説明し、各段階で「あなたが責任者ならどう判断するか」を個人またはグループで考え、発表します。
例えば「避難指示を出すタイミング」「情報が錯綜している中での優先順位付け」など、現実的な選択を迫る内容にすることで、実践的な判断力やチームでの連携力を養います。
④主体的に考え、行動する(実践)
パネルディスカッション形式の体験共有や、災害発生時の模擬意思決定会議を行います。
実際に災害を経験した社員や外部講師を招き、「その時、どんな選択をしたか」「何が難しかったか」を語ってもらい、参加者が質疑応答を通じて主体的に考える機会を作ります。
また、役職ごとに分かれて「今、何を決めるべきか」「どんな情報が必要か」を議論することで、現場の緊張感や責任感を体験し、組織内での役割や連携の重要性を実感できます。
これらのステップを段階的に取り入れることで、従業員の当事者意識や判断力が着実に高まり、いざという時に本当に役立つ防災訓練へと進化させることができます。
組織の枠を超えた防災への取り組み事例
防災訓練は、社員やその家族、地域を巻き込んだ年間イベントとして実施することで、さらに大きな価値を生み出します。
親子で参加できる学びのイベント
「防災運動会」や「防災謎解きゲーム」など、親子で協力しながら防災知識を学べるイベントは、楽しみながら自ら考える良い機会になります。
地域と協力した密着型イベント
自治体やNPOと連携した「防災フェア」や、地域住民を招いた「炊き出し訓練」は、地域の一員としての貢献を示すと同時に、災害時の円滑な連携にも繋がります。
企業の信頼度向上やBCPの基盤強化にも効果的です。
まとめ
防災訓練は、もはや単なるリスクマネジメントではありません。
従業員の命を守り、コミュニケーションを活性化し、チームワークを強化する企業のイベントとして、またSDGsへの貢献や企業イメージ向上にも繋がる重要な機会です。
まずは、今年の防災訓練に「自分ごと化」の工夫を一つ取り入れてみませんか?また、HISでは企業のイベントの企画から運営、貴社の課題に合ったサポートをしておりますので、お気軽にご相談ください。