こだわりと想いから引き継がれるストーリー

~アサヒ飲料様の新しいコミュニケーション事例「オンラインツアー」~

公開日:2021年4月13日

新型コロナウイルスにより、私たちの生活は大きな変化を余儀なくされました。 社会現象は言わずもがな、ビジネス市場でも予定していた事業の中止をせざる得ない企業様も多いかと思います。

今回、コロナ禍により事業企画の一時中断を強いられ、課題解決の一つとして「オンライン工場見学ツアー」を企画されたアサヒ飲料株式会社の白𡈽久美子様にインタビューさせていただきました。

2021年3月、「カルピス」と「三ツ矢サイダー」の2本立てで開催されたオンラインツアーへの想いから開催までのお話しをお伺いしました。

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西に「三ツ矢サイダー」、東に「カルピス」

明治時代、兵庫県で発売が開始された「三ツ矢サイダー」は、誰もが一度は口にしたことのあるシュワっと弾ける炭酸水だ。この国民的炭酸飲料の製造過程や歴史が学べる「三ツ矢サイダー」ミュージアムは2011年に兵庫県明石市でオープンされ、2019年には約5万人の来場者数を誇る人気の工場見学施設へと成長した。

同じくアサヒ飲料様のロングセラーブランド「カルピス」はブランド生誕100周年を記念し、2019年に群馬県で新しくオープンしたのが「カルピス」みらいのミュージアムだ。
さすがの「カルピス」、10月の一般公開を経てからは、毎月月初に発売されるオンラインの事前予約は、発売初日に受付該当月間が満席になるほどの大好評となった。

このミュージアムの立ち上げ時から展示内容・コンテンツ・運営計画まで一環して担当されたのが、今回お話しをお伺いした白𡈽様だ。

「『カルピス』みらいのミュージアムも、2020年には案内係や定員を増やし、西の『三ツ矢サイダー』ミュージアムと同じく年間5万人の来場をめざし、沢山の方に来ていただけるように体制を整えていた状況でした。

地域共創の拠点として地域の方々とのイベントも計画していたところ、コロナという予想だにしていなかった事が起き、グループの方針として”まずはお客様と従業員の安全と、安全な商品をお届けする事”を第一とし、休業させていただく事になりました。」

穏やかに淡々とお話しされる白𡈽様の言葉からは、「カルピス」100年の歴史を背負いオープンまで辿り着いた矢先、初動が好調であったからこそ、コロナという未曾有の事態に肝を焦がす想いを感じた。

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△アサヒ飲料様工場見学イメージ

コロナ禍に抱えた大きな課題

関東圏の緊急事態宣言も緩和された2020年10月、警戒警報に則り県内に限定し公開を再開するも、入場は予定していた人数の半分以下に制限。「見学にいきたいけど、まだ行けないのか」「(地域の方々も)まだ行ってないから行きたい」といった来館を待ち望む声が止まらなかった。

「モノはあるのですが、人が呼べないという状況が続きまして、これはどうしたものかと...我々も何をやっていけば良いか、コロナに対してどうしたら良いのかと課題がありました。

工場見学で用意したコンテンツを通して、アサヒ飲料が持っている製品のこだわりであったり、ブランドが長く引き継いできた想いなどを皆さんにお伝えする機会がないかと考えていたところ、HISさんから日頃のお取引の関係でオンラインツアーの話をいただきました。」

「コンテンツはある」、「お客様の希望にもお答えしたい。」
多くの人を集めることが難しいコロナ禍で「オンラインで工場見学を楽しんでいただく」という新しい試みに、HISからオンラインツアーの提案を受けた時に「是非トライしよう!」と決まったそうだ。

オンラインで行われるお客様とのコミュニケーション

アサヒ飲料様は以前より360度カメラで撮影した工場ラインのYoutube動画や、VR動画・アニメーションなど、豊富な動画コンテンツを発信している。白𡈽様は、デジタルを使ったコミュニケショーンツールとして、LINEやTwitterなど今では何百万人もの利用者やファンとつながるSNSアカウントの運用立ち上げも担当された。 そんな中、白𡈽様はデジタルでブランド・コミュニケーションを展開する難しさも感じていたと言う。

「日々、沢山の情報があふれ、流れているので、いかに私たちの活動や商品を知っていただいて、好きになってもらうか、信頼してもらうかを常に考えていました。情報過多のこの時代にお客様へどれくらい届いているのか、と。」

そんな思いを持ちながら、ある日、白𡈽様はHISの「世界5都市を巡るオンラインツアー」に参加された。HISの人気オンラインツアーの一つであるこのツアーは、海外拠点を活用してツアー中に現地とライブで繋がる。画面にはケニアのサバンナや、美しいハワイのビーチ、活気あふれるインドの市場などが広がる。

他のデジタル動画コンテンツと違うところは、お客様とコミュニケーションを取りながら一緒にツアーを作りあげる点だ。
参加者は「そこに見える橋はなんですか?」「ぶらさがっているそれはなんですか?」など、画面越しで気になった事をチャットでどんどん質問する事ができる。
質問内容は、司会者を通して現地のガイドに届き、その場で答えてくれる。その他にも、オンライン機能を使ったクイズや投票などを行い、その場に集まった皆で楽しむことができる。
このお客様と司会者・ガイドとのやり取りが、白𡈽様にとって印象に残ったそうだ。

「コロナ禍でも、工場見学をオンラインにすることで、「遠くにいるので行けない」と思っていた方や、「子どもが小さくて行けない」といった方がコンテンツを体験し、「リアルに行けるようになったら行ってみよう!」と思えるきっかけにもなり、新たな可能性が広がると思いました。」

紙芝居的に画像や映像をオンラインで見せることは、他のツールでもできる。
オンラインツアーは、インターネットにより実際に足を運ぶよりも気軽に利用者が参加できるだけでなく、お客様と製造メーカーが直接コミュニケーションを取る機会になるのだ。

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△アサヒ飲料様 クイズ一例 
めざせ「カルピス」マスター!「カルピス」クイズ

リハーサルで感じた課題と、デジタルならではの”おもてなし”

「工場ですので、実は市街地と違ってネットワーク環境が弱かったりするんですよね」
工場地帯にあるアサヒ飲料様のミュージアムは、建屋によっては普通の携帯電話も繋がりにくい。強力なWiFiルーターを用意したとしても電波が入りにくい場所があり、リハーサルでは当日のルートに沿って細かくネット接続を確認する必要があったと言う。

また電波がある程度上手くつながったとしても、時間配分や司会者と案内係との間に生じる多少の”時差”が起こることもリハーサルを通して学んだと言う。そして、ミュージアムガイドの経験が豊富にある案内係に対しても、少なからず準備が必要だとおっしゃられた。

「案内係に「ちょっと可笑しいんじゃない!?」っていうくらいテンションを上げてみてと(笑)。
カメラマン1人が持っている小さなスマートフォンに向かって「みなさーん!」と、普段よりもオーバーリアクションで話して欲しいとお願いしました。普通のトーンだと暗めに感じてしまうから、見ている人も楽しくなるような話し方が大切ですね。」

オンラインツアーでは参加する時に必ず顔を出さなくてはいけないわけではない。
顔を出して参加しているユーザーもいるが、工場ミュージアムを歩きながら説明している案内係には、お客様の反応は見えない。
目の前で案内するリアルな工場見学とは違う、オンラインツアーなりの工夫が必要だったそうだ。

「リアルに勝るものはない。」

白𡈽様は何度もおっしゃられた、「リアルに勝るものはない」
これはアサヒ飲料様の工場見学に対する意義でもある。

そもそも、このミュージアム(工場)一般公開というのは、アサヒ飲料様のビジョンである「社会の新たな価値を創造し、我々の「つなげる力」で発展させ、いちばん信頼される企業となる」を実現するための顧客との重要な接点の1つだと考えられている。

消費者は何回もリピートして購入する大好きな商品でも、ネットでわざわざ検索することは稀である。ましてや歴史や製造者の想いなどの情報に触れることは、残念ながらほぼない。しかし、工場見学は消費者が受け取る情報の質が変わる。

「家族で工場へ遊びに行ってみよう。となると、「わー!初めのボトルってこんな感じだったんだ!」といったように、1時間~1時間半かけて展示物を見たり・嗅いだり・触ったり、その場で飲んだり…。自分でわざわざ時間をかけて、そこで五感を使って体験する価値というのは全然違う、敵うものがないのではないかと感じています。」

工場見学に対するメーカーの特別な想いがある中で、今回企画されたオンラインツアーのこだわり「お土産付プラン」についてお伺いした。

「感じていただけることがあるのなら、商品を是非体験していただきたいと想い、全てのコースに当社の飲料をお土産として付けさせていただきました。」

予約開始日から満席となった「カルピス」みらいのミュージアムや、人気を誇る「三ツ矢サイダー」ミュージアム。
行きたくても行けなかった大好きな商品の工場見学に、気軽に参加することが出来るようになったユーザー。
メーカーも、工場見学を通して商品の魅力を伝えることができる。制限されたコミュニケーションの中で、お土産は「新しいリアル」の形であり、商品を通してその味わい以上のことを感じてもらう大切なツールだ。

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△アサヒ飲料様「三ツ矢サイダー」 お土産一例

美味しい味の先にある、世代を超えて伝わるストーリー

今回のオンラインツアーの申込者は40代が最も多く、お子様と一緒にファミリーで参加を楽しみにする方も多い。
そこには、ロングセラーブランドをだからこそ「商品の味だけでなく、世代を超えて伝わる、飲み物を飲んで過ごした時間が思い出や記録の中にある」と白𡈽様は話す。

「サッカーの練習の後に飲んだな」
「部活の後にロング缶を買ったよね」

「三ツ矢サイダー」と聞いて、青春時代や家族との思い出を思い出す読者も多いのではないだろうか。

青い水玉模様の紙で包まれた茶色の瓶に入った「カルピス」、皆さんにはどんな思い出があるだろうか。
「あの子の家で飲んだ『カルピス』は自分の家より濃い」
「お母さんはどういう味が好き?濃いめが好き。お兄ちゃんも濃いめ。私はちょっと薄め。」
「最後、瓶の底に残った『カルピス』を兄弟で取り合った。」

水で薄める希釈タイプの「カルピス」の話には思わず「あーわかる!わかる!」とインタビュー中に皆でうなずいてしまう。

最近は「カルピスウォーター」の登場により、希釈タイプの「カルピス」を知らない若い世代のお客様もいるという。白𡈽様曰く、希釈タイプの「カルピス」は初めての食育・コミュニケーションツールにもなるそうだ。
このオンラインツアー中にも「どれくらい水入れる?」なんて話ながら作る参加者がいるだろう。美味しいの先には、人々の心に残るストーリーが生まれる。

オンラインツアー開催を間近に控えた白𡈽様からは、試行錯誤と挑戦を繰り返して企画したミュージアムのオンラインツアーに対する想いが伝わってきました。

(2021年3月20日催行)「カルピス」みらいのミュージアム オンライン工場見学ツアー

(2021年3月26日催行)「三ツ矢サイダー」ミュージアム オンライン工場見学ツアー

※三ツ矢サイダー®、カルピス®、カルピスウォーター®は、アサヒ飲料(株)の登録商標です。



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