お問い合わせはこちら

マーケティングツール
に関するご相談

ご相談・お問い合わせ

最新のサービスや実施事例、
イベント情報をお届け

メルマガ登録

データで考えるポストコロナ時代の働き方 ~テレワーク vs オフィスワーク どちらの勤務環境が適切か~

公開日: その他
データで考えるポストコロナ時代の働き方 ~テレワーク vs オフィスワーク どちらの勤務環境が適切か~
HIS×knowns

企業はテレワークを今後も続けるのか

総務省の情報通信白書によれば、1回目の緊急事態宣言時56%に達したテレワーク実施率は、その後概ね3割程度で推移している。新型コロナウイルス対策として普及したテレワークも、通勤時間の削減・ワーケーションの容易化といった副次的効果を通じて従業員満足度(ES)を高める可能性が指摘されるなど、新たな側面が注目されている。新型コロナウイルス対策の出口戦略が議論される中、今後の運用について決めかねている企業は多いであろう。
厚生労働省の調査によれば、ESの向上は従業員意欲を高め優秀な人材確保を可能にし、業績や生産性に対して正の影響を与える。 「魅力ある職場づくり」のための1つとしてワーク・ライフ・バランスの改善のための柔軟な勤務場所設定が有効とされ、具体的な方策としてテレワークの導入が例示されている。一方、厚生労働省の分析の中で、テレワークでは「コミュニケーションがとりにくい」「仕事と仕事以外の時間の切り分けが難しい」と考える従業員が一定数いることが指摘されるなど、現場の声として、会社で働きたいという意見が少なくないのもまた事実である。
「テレワークが良い」と「テレワークは嫌だ」の相反する2つの意見が存在する中、意見はどのような違いによって生まれるのか、そして企業はどのようにテレワークに関する方策を決めればよいのか。HIS × knownsはそうした疑問に解を示すべくアンケート調査を実施した。

アンケート調査

【図表1】 回答者全体【図表1】 回答者全体

アンケートは現役労働者を対象にknownsApp上で行い、1,629の有効回答を得た。knowns®はシングルソースによるアンケート調査をその特徴とし、回答者属性を細分化して分析を行うことができる。
「コロナ蔓延前の2019年までと比較して、今後どのように働きたいですか?」との質問に対する全体の回答を示したのが【図表1】である。「自宅で働きたい」と答える人が3割を超える一方、「会社で働きたい」と答える人も少なくはないことがわかる。

【図表2】 20~30代の回答者【図表2】 20~30代の回答者

年代別の差を見るために20~30 代の回答者に絞った結果が【図表2】である。
それぞれグラフ右の数値は全体の回答との比(特徴度)を示し、青は全体より多いことを・赤は全体より少ないことを表す。40~50代で絞り込めば「会社で働きたい」という回答者が全体比の121%に及び、若手ほど「自宅で働きたい」と考え、ベテランほど「会社で働きたい」と考える傾向が強いということがわかる。

【図表3】 女性の回答者【図表3】 女性の回答者

さらに男女別の差を測るため、女性の回答者に絞った結果が【図表3】である。男性に比べて女性の方が「自宅で働きたい」と考える傾向が強いことが示されている。

自宅で働ける環境か

【図表4】 「自宅で働きたい」の属性別構成比【図表4】 「自宅で働きたい」の属性別構成比

「自宅で働きたい」という回答者の家族構成(婚姻有無・子供有無)の特徴度を示したのが【図表4】である。円の外側が回答者全体の構成比、円の内側が「自宅で働きたい」という回答者の構成比である。既婚者と比べて未婚者、子供ありと比べて子供なしが「自宅で働きたい」と考える傾向が強いことがわかる。
内閣府の調査4では、テレワーク経験者が感じるテレワークのデメリットとして「同居する家族への配慮が必要」が挙げられている。厚生労働省の指針5において、テレワークにより家族と時間が増える点が指摘される等、家族がいる従業員に対してテレワークは一定のメリットを与える一方、家族がいる環境で働くことや仕事と家事の兼ね合いに難しさを感じる等、潜在的にテレワークに対する心理的な障壁が発生している可能性がある。

ソシエタスクラスタ

正の相関がある特徴度 負の相関がある特徴度
ジェンダーニュートラル 117 結果至上主義 83
安定志向 115 ジェンダーバイアス 84
物欲旺盛 114 目標達成型 87
インドア派 112 上昇志向 88
時間にルーズ 112 柔軟姿勢 88
アウトドア派 90
【図表5】「自宅で働きたい」の個人的価値別特徴度

knowns®ではあらゆる価値観に関する一般的な質問を通じて回答者のプロファイル情報を集積し、個人の価値観を独自の分析によりソシエタスクラスタという集団に振り分けている。
【図表5】は個人的価値で分類した全44種類のソシエタスクラスタにおいて、「自宅で働きたい」と考える傾向が強い集団と弱い集団を抽出した結果である。回答者全体と一致する特徴度100を基準に±10以上の集団に絞って示している。
相反する性向を持つ回答者集団、「ジェンダーニュートラル」と「ジェンダーバイアス」、「安定志向」と「上昇志向」、「インドア派」と「アウトドア派」等が正負それぞれの相関がある特徴度を示す集団として顕在化していることは特筆すべき点であろう。ジェンダーニュートラルである集団は、家庭内の家事と仕事の分担や業務の進め方において、性差やその他の固定観念に囚われない思考を行う傾向が強く、テレワークに積極的な可能性がある。また「安定志向」や「インドア派」に区分されるような比較的静謐で慎重な行動をとる集団は、他者に干渉されにくいテレワークを肯定する可能性がある。
これらを二元論で述べれば「ジェンダー」「スピード」「外出趣向」といった点を尺度に、より寛容的ないし穏健的な態度を示す集団は「自宅で働きたい」と考える傾向が強く、より厳格的ないし行動的な態度を示す集団は「自宅で働きたい」とは考えない傾向があるともいえるだろう。

正の相関がある特徴度 負の相関がある特徴度
対人ストレス過多 116 心にバリア 84
マイペース 115 依存分散型 89
推しで開放 114 ワーカホリック 90
【図表6】「自宅で働きたい」の社会的価値別特徴度
正の相関がある特徴度 負の相関がある特徴度
ネタ消費 124 リターン期待型消費 81
ブランド消費 124 実用性重視消費 83
失敗回避型消費 120
オンリーワン消費 116
イノベーター消費 116
ステータス消費 115
ジャケ買い消費 113
トレンド・限定重視消費 110
【図表7】「自宅で働きたい」の消費的価値別特徴度

【図表6】は社会的価値で分類した全30 種類のソシエタスクラスタにおいて、【図表7】は消費的価値で分類した全30種類のソシエタスクラスタにおいて、それぞれ同様の方法で集計した結果である。いずれも顕著な特徴を示す結果を生むことはなかった。
先述の厚労省分析においてもテレワークの課題としてコミュニケーションの円滑性が挙げられる等、特に社会的な人との繋がり方がテレワークに対する考えに影響を与えるという仮説は想像しやすいが、本調査においては少なくとも二元論的に結論を導く充分な特徴は見出すことができなかった。むしろ人の行動や思考の源流ともいえる個人的価値がテレワークについての考えを左右していることが示唆されている。

従業員理解と取るべき行動

ここまで「コロナ蔓延前の2019年までと比較して、今後どのように働きたいですか?」という1 つの質問について、回答者の属性を細かく分類し考察を行った。「若年層ほど」「女性ほど」「未婚者ほど」「子供がいないほど」「寛容的ないし穏健的性向であるほど」自宅で働きたいという傾向が強い結果となった。本論では「テレワーク」を在宅勤務と読み替えて分析を進めてきたが、政府による定義6では「ICTを活用して、労働者が所属する事業場と異なる場所で、所属事業場で行うことが可能な業務を行うこと」とされており、具体例として在宅勤務の他、モバイルワークやサテライトオフィスでの勤務が列挙されている。本調査において「自宅で働きたい」と「場所に制限なく働きたい」の和は過半数を超え、モバイルワークやサテライトオフィスでの勤務を含む、広義でのテレワークに賛成の従業員が多数を占めることがわかった。一方で「会社で働きたい」という回答者も25%に及ぶ点も看過できない。企業としては、従業員の属性を、性別や家庭環境などデモグラフィックな観点の他、個人の価値観にも目を向けてこれを把握・理解し、多様な働き方を許容し、それを可能にする必要があるといえる。
また、Dutcher(2012)7はテレワークと生産性の関係について、単調な業務はオフィス勤務の方が、クリエイティブな業務はテレワークの方が、それぞれ直接的に生産性を向上させる可能性を指摘している。従事している業務によって、生産性管理という観点での適切な業務体制は異なる可能性があり、これも考慮すべきといえる。

まとめ

テレワークとオフィスワークは一方が優れていて他方が劣っているというものではない。ポストコロナ時代においてもテレワーク制度が継続されることを多くの従業員が望んでいる反面、「会社で働きたい」と考える従業員も少なくなく、この考え方の違いは個人の属性や価値観によって生まれている可能性がある。
企業は従業員のこれら属性や価値観を適切に把握・理解し、そのクラスタに合った労働環境を提供すべきである。 本調査によって、個人の価値観が多様化する社会においては、労働環境も自ずから多様化する必要がある点が改めて示されたといえるだろう。

<参考文献>
1. 総務省,令和3 年度版 情報通信白書,2021
2. 厚生労働省委託(三菱UFJ リサーチ&コンサルティング株式会社),今後の雇用政策の実施に向けた現状分析に関する調査研究事業報告書~企業の雇用管理の経営への効果~,2016
3. 厚生労働省,令和3 年度版 労働経済の分析 -新型コロナウイルス感染症 が雇用・労働に及ぼした影響-,2021
4. 内閣府,第4回 新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査,2021
5. 厚生労働省,テレワークではじめる働き方改革~平成26 年度厚生労働省テレワークモデル実証事業を踏まえて~,2019
6. 首相官邸,平成29 年5 月30 日閣議決定 世界最先端 IT 国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画,用語集,2017
7. E. Glenn Dutcher,The effects of telecommuting on productivity: Anexperimental examination. The role of dull and creative tasks,2012

PAGE
TOP